東京都豊島区では、都市化が進み利便性の高いエリアである一方、空き家率が都内で最も高い水準となっており、深刻な地域課題となっています。
相続後の放置や老朽化による利活用困難な住宅が増加し、管理が行き届かない物件も目立ちます。
この記事では、豊島区における空き家の現状や解体費用の目安、活用できる補助金制度などを、空き家所有者の方が解体を検討する際に役立つ情報として整理してお伝えします。
豊島区は今「空き家」が増えている?
都市部で利便性の高い豊島区ですが、実は東京都23区の中でも「空き家の多い区」として知られています。
特に、相続後に使われなくなった住宅や古い賃貸物件の空室が放置されるケースが目立ち、老朽化による倒壊リスクや治安の悪化といった問題にもつながっています。
まずは、豊島区の空き家の実態について、最新のデータをもとに確認してみましょう。
最新の空き家率データ
豊島区の空き家率・空き家数は、都内でもトップクラスです。以下の表に、主な数値を整理しました。
| 指標 | 数値 | 備考 |
|---|---|---|
| 空き家率 | 13.94% | 東京都内で1位(2023年時点) |
| 空き家数 | 29,810戸 | 区内住宅総数:213,800戸 |
| 放置空き家率 | 0.86% | 約1,830戸が放置状態と推計 |
なぜ空き家が増えているのか
豊島区で空き家が増加している背景には、以下のような複数の要因が重なっています。都市部ならではの事情と、時代の変化による影響が複雑に絡み合っています。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 相続後の放置 | 高齢の親が亡くなった後、子世代が区外・都外に住んでおり、住宅の管理・活用がされず放置されるケースが多い。 |
| 老朽化による活用困難 | 昭和40〜50年代に建てられた木造住宅が多く、再利用やリフォームが難しい物件が空き家化しやすい。 |
| 賃貸物件の空室増加 | 区内の空き家の多くは賃貸用住宅で、築古アパートの空室が目立つ。新築との競争激化で埋まりにくくなっている。 |
| 人口構造の変化 | 単身世帯の増加により、広めの一戸建てやファミリー向け住宅が選ばれにくくなっている。 |
こうした要因により、豊島区では空き家の「増加」と「長期放置」が同時に進行しており、早急な対策が求められています。
豊島区の解体補助金
豊島区では、空き家の増加に対応するため、老朽建物の除却や空き家の利活用に関する独自の支援策を展開しています。
主に「不燃化特区」への指定を活用した除却助成や、地域活性化につながる空き家の有効利用を促す制度が整備されています。
東京都 豊島区 の補助金情報
ブロック塀等改善工事助成事業【道路に面する塀のみ】
| 事業・条令名 | ブロック塀等改善工事助成事業【道路に面する塀のみ】 |
|---|---|
| 制度の概要 | 豊島区内の避難路に面するブロック塀等で、地震等により倒壊の危険のあるものについて、撤去費用・設置費用の一部を助成します。 助成金の申請は契約前・工事着手前、工事完了は2月末迄の工事のみが対象となります。 |
| 対象申請者 | 助成対象者は、助成対象ブロック塀等の所有者とする。 なお、次の各号のいずれかに該当する者を除くものとする。ただし、区長が特に必要があると認める者についてはこの限りでない。 ・国、地方公共団体その他これらに準じる団体。 ・ブロック塀等改善工事について、本要綱以外による助成金交付の決定を受けた者。 ・建築物の販売による利益を目的とした事業者。 ・中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第2条第1項各号の規定による中小企業者以外の会社。 ・条例第6条第2項による事前協議により、拡幅整備が行われた場合を除き、条例第6条第1項による事前協議が必要となるもの。 |
| 対象建築物の概要 | 助成金の対象となる塀等は、次の各号に掲げる要件をみたすものとする。ただし、既存のブロック塀等の除却を伴わない工事は対象としない。 ・豊島区内に存する塀又は門柱のうち、別紙1「ブロック塀の点検のチェックポイント」にある1から6のチェック欄に1以上のチェックが入ること。 ・倒壊の恐れのあるブロック塀等としては、擁壁を含むものとする。また、撤去する塀等としては、コンクリートブロック造、石造、レンガ造その他これらに類する構造であること。 ・撤去する塀等及び新たに築造する塀等は、豊島区耐震改修促進計画に定める避難路(以下、「避難路」という。)に面していること。又は、一般の交通の用に供している通路に面していること。 ・撤去する塀等は、避難路又は通路の路面(以下、「路面」という)の中心から対象物の上端部までの垂直距離が1.2m超であること。 ・既設ブロック塀等の部分除却については、路面の中心から対象物の上端部までの垂直距離を1.2m以下とすること。ただし、既設の擁壁の高さが1.2mを超え、かつ、ブロック塀等の全部の除却が困難な場合は、敷地地盤面上に存する既存ブロック塀等の一部を除却することとする。 ・新たに築造する塀等については、路面の中心から対象物の上端部までの垂直距離が1.2mを超える部分を、フェンス等とすること。ただし、敷地の形状及び構造上やむを得ないもの又は構造耐力上安全であることが確かめられたものについては、この限りではない。 ・新たに築造する塀等については、避難路に突出することなく、豊島区狭あい道路拡幅整備条例(平成13年7月13日条例第50号。以下「条例」という。)に基づく拡幅整備を尊守すること。 ・その他特に区長が必要と認めるもの。 |
| 補助金額概要 | 次の費用の合計額になります。 撤去費用:1メートルあたり2500円 新設費用:助成対象経費の2分の1(30万円が限度) |
| 定員 | 無し |
| 業者指定 | 無し |
| 問い合わせ先 | 建築課許可・耐震グループ |
アスベスト分析調査助成事業
| 事業・条令名 | アスベスト分析調査助成事業 |
|---|---|
| 制度の概要 | 建築物の解体・改修工事の際に行う吹付け材(塗装材を除く)の分析調査の費用の一部を助成します。(令和6年度開始) |
| 対象事業・工事の概要 | 【助成対象となる調査】 専門検査機関による吹付け材の分析調査であり、調査完了後1年以内のもの吹付け材写真 (注釈) ・一般的にレベル1に分類される石綿含有吹付け材(吹付けアスベスト、吹付けロックウール、吹付けバーミキュライト、吹付けパーライトのいずれか)の分析調査が助成対象となります。 ・レベル2やレベル3に分類される建材や仕上塗材(吹付け工法のものも含む)は助成の対象外となります。 ・分析調査費用について、豊島区から別途助成を受ける場合(不燃化特区における解体等への助成を受けるなどの場合)は、この助成の対象外となります。 |
| 対象申請者 | ・区内に建築物を所有する個人又は法人 ・区内に所在する分譲集合住宅の管理組合の代表者 ・その他区長が必要と認める者 |
| 対象建築物の概要 | 区内に所在する建築物のうち、平成18年8月31日以前に建てられたもの |
| 補助金額概要 | 分析調査に要した費用の2分の1相当【上限10万円】 (1,000円未満切り捨て) |
| 定員 | 無し |
| 業者指定 | 無し |
| 問い合わせ先 | 環境保全課公害対策グループ |
不燃化特区における助成制度(老朽建築物除却助成)
| 事業・条令名 | 不燃化特区における助成制度(老朽建築物除却助成) |
|---|---|
| 制度の概要 | 不燃化特区に指定されている5地区では、解体・建替えを行う方に対する助成制度を実施しています。 |
| 対象申請者 | 除却する建築物の所有権を有する方で、以下のいずれかに該当することが必要です。 ただし、宅地建物取引業者(宅地建物取引業法第2条第3号)を除きます。 ※除却助成金に類する補助金等の交付を受けている方、または受けることになっている方は対象外となります。 1.建物の所有権を有する個人 例外として、建物所有者等の配偶者。または、建物所有者等の2親等以内の直系血族とその配偶者。(申請時には建物所有者全員の委任状が必要になります。) 2.中小企業法第2条第1項各号に規定する中小企業者 3.公益社団法人または公益財団法人の認定等に関する法律第2条第3号に規定する公益法人 |
| 対象建築物の概要 | 老朽建築物:減価償却資産の耐用年数に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)別表第1に定める耐用年数の3分の2を超過している建築物 例:住宅の法定耐用年数の3分の2 RC:32年 鉄骨造:23年 軽量鉄骨:18年 木造:15年 ※年数は登記簿に記載された建築年月から起算して算出します。 ※住宅以外の建物を除却する場合には、管轄の税務署等で細目(用途)ならびに法定耐用年数を確認の上、申請してください。 |
| 補助金額概要 | 除却費上限:1000万円 ・老朽建築物及びそれに付属する工作物の除却工事費及び除却後の敷地の整地費を助成します。ただし、限度額は1,000万円とします。 ・実際にかかった経費と区が別に定める単価を用いて算出した学を比較して、額の少ないほうが助成金額になります。 |
| 定員 | 無し |
| 業者指定 | 無し |
| 問い合わせ先 | 地域まちづくり課事業調整グループ |
特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震補強設計助成事業
| 事業・条令名 | 特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震補強設計助成事業 |
|---|---|
| 制度の概要 | 豊島区内の特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震補強設計について、助成金を交付します。 申請期限はありませんが、予算確保のため、事前にご相談下さい。 なお単年度事業は、毎年度2月末までに完了できる事業のみ受け付けております。 |
| 対象申請者 | 建物所有者、共有の場合は代表者、区分所有の場合は管理組合の代表者 |
| 対象建築物の概要 | ・昭和56年5月31日以前に建築された建築確認を受けた特定緊急輸送道路沿道の建築物で、建築物の高さが接する特定緊急輸送道路の中心からその部分までの距離を越えるもの ・原則として、建築基準法及び関係法令に適合していること ・耐火建築物又は準耐火建築物であること |
| 補助金額概要 | 1.実際に、耐震補強設計費用震補強設計に要する費用 2.助成対象基準額=延べ面積×助成基準単価(1平方メートル当たりの上限額) 【助成基準単価】 延べ面積1,000平方メートル以下の部分・・・5000円/平方メートル、 延べ面積1,000平方メートルを超え2,000平方メートル以下の部分・・・3500円/平方メートル 延べ面積2,000平方メートルを超える部分…2000円/平方メートル 1と2の低い額が助成対象金額になり、その5/12の額が助成額になります。 ※事前相談が必要ですのでご注意ください。 |
| 定員 | 無し |
| 業者指定 | 無し |
| 問い合わせ先 | 建築課許可・耐震グループ |
不燃化特区における助成制度(固定資産税・都市計画税の減免)
| 事業・条令名 | 不燃化特区における助成制度(固定資産税・都市計画税の減免) |
|---|---|
| 制度の概要 | 要件を満たす場合、最長5年間の税制優遇を受けることができます。 |
| 対象事業・工事の概要 | ・不燃化特区内において建替えを行った住宅にかかる固定資産税・都市計画税の減免 ・老朽住宅除却後の土地に対する固定資産税・都市計画税の減免 |
| 定員 | 無し |
| 業者指定 | 無し |
| 問い合わせ先 | 豊島都税事務所固定資産税班 |
ポイント・注意点
- 助成制度の利用には「事前申請・交付決定」が必要な場合が多いため、解体や改修を決めたら早めに区の窓口へ相談することが重要です。
- どの制度にも「住民税・法人税滞納なし」「過去に同制度適用を受けていない」などの条件があります。制度利用予定の方は要件確認を必ず行いましょう。
- 活用制度では「地域貢献」「10年以上継続」の意思などが要求されることもあります。単なる空き家除却ではなく、その後の活用まで視野に入れた計画を持つと制度活用しやすくなります。
豊島区の解体費用相場はいくら?
空き家を手放す前に、最も気になるのが「解体費用」です。
豊島区は住宅が密集しているエリアが多く、重機の搬入制限や近隣への配慮などにより、解体工事にかかるコストが高くなる傾向があります。費用の目安を把握することは、補助金活用の計画や業者選びを行ううえでも重要です。
建物の構造別にみた費用目安
豊島区の解体費用は、都内全体の相場とほぼ同水準ですが、敷地条件や建物構造によって差が生じます。以下に、代表的な「木造住宅」の坪数別費用目安を示します。
| 坪数帯 | 坪単価目安 | 30坪換算の概算費用 |
|---|---|---|
| 10坪未満 | 約 6.3万円/坪 | 約 63万円 |
| 10坪台 | 約 7.4万円/坪 | 約 111万円(15坪) |
| 20坪台 | 約 6.6万円/坪 | 約 165万円(25坪) |
| 30坪台 | 約 6.1万円/坪 | 約 183万円(30坪) |
| 40坪台 | 約 5.9万円/坪 | 約 236万円(40坪) |
| 50坪台 | 約 5.9万円/坪 | 約 295万円(50坪) |
| 60坪台 | 約 6.0万円/坪 | 約 360万円(60坪) |
| 70坪以上 | 約 5.3万円/坪 | 約 371万円(70坪) |
※鉄骨造やRC造の建物は、木造の1.5〜2倍の費用がかかるケースもあります。
特に豊島区は土地が狭小な物件が多く、手壊し作業や特殊重機使用が必要になる場合、通常よりも高額になることがあります。
費用が高くなる・安くなるケース
解体費用は単に建物の大きさだけでなく、立地や構造、残置物の有無などによって大きく変動します。豊島区のような密集市街地では特に以下の要素が費用に影響を与えます。
| 項目 | 費用が高くなるケース | 費用が安くなる/抑えられるケース |
|---|---|---|
| 立地条件 | 前面道路が狭い/旗竿地/隣接建物との間隔が狭い | 重機搬入可能な広い前面道路に面している |
| 建物構造・階数 | RC造・鉄骨造/地下室あり/3階建て以上 | 木造2階建て以下/地下なし |
| 残置物の有無 | 家具・家電・ゴミなどが大量に残っている | 所有者が事前に撤去済み |
| アスベスト含有 | 調査・除去が必要な建材が含まれている | 含有建材がない/検査済みで除去不要 |
| 近隣環境 | 隣接建物との距離が近く、養生・防音対策が必要 | 周囲に空間があり、簡易養生で済む |
これらの条件を考慮しながら見積もりを取ることで、余計なコストの発生を防ぐことができます。
解体工事価格は上昇傾向
木造住宅の解体費用は、ここ数年で全国的に上昇しています。
下記グラフでは、各年度の平均的な傾向をもとに算出した概算値を示しており、実際の費用は、建物の構造・立地・工事条件などによって大きく変動するため、あくまで目安として参考にしてください。
解体工事をご検討の方は、早めに見積もりを取ることをおすすめいたします。
概算シミュレーター
該当市区町村を選択すると、補助金を含めたおおよその解体工事費用が分かります。
このシミュレーターは、あくまで目安を知るためのツールです。
実際の費用は建物の構造や立地条件などによって変わるため、正確な金額を知りたい方は見積もりを依頼するのがおすすめです。
解体費用を抑えるポイント
解体費用は条件によって大きく変わるため、工事を依頼する前の工夫がコスト削減に直結します。
豊島区では、敷地条件が複雑だったり近隣との距離が近かったりするため、慎重に進める必要があります。
相見積もりの重要性
解体費用を適正価格で抑えるうえで、最も基本かつ重要なのが「相見積もり」です。
特に豊島区のような住宅密集地では、現場ごとの条件が異なるため、業者ごとに提示される金額や対応内容に大きな差が出ることがあります。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 価格の妥当性を把握できる | 複数社の価格を比較することで、極端に高い・安い見積もりを避けられる |
| 作業内容の違いがわかる | 養生範囲、残置物処理、重機搬入など、具体的な工事内容を比較できる |
| 業者の対応力を確認できる | 現地調査の有無や説明の丁寧さから信頼性を判断できる |
| 補助金対応の実績が確認できる | 豊島区の補助制度に詳しい業者なら、スムーズな申請サポートが期待できる |
| 値引き交渉の材料になる | 他社の見積もりを根拠に交渉することで、金額調整の可能性が広がる |
相見積もりは最低でも3社以上から取得するのが理想です。
見積書の明細までしっかり比較し、自分に合った業者を選びま
業者選びの注意点
解体工事は一度きりの大きな支出になるため、信頼できる業者選びが何より重要です。
豊島区では敷地が狭小で近隣住宅と密接しているケースが多く、工事中のトラブルや近隣対応の丁寧さが非常に問われます。以下の表は、業者選定時に必ず確認しておきたいポイントです。
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| 許可の有無 | 解体工事業登録または建設業許可があるか(都庁・区のサイトで検索可能) |
| 見積書の内訳 | 「一式」ではなく、重機・処分・養生・人件費などの詳細が明記されているか |
| アスベスト対応 | 含有調査・除去が必要な場合の対応経験や別途費用の明示があるか |
| 近隣配慮 | 工事前のあいさつ回り・防音・粉じん・振動対策などの実施体制があるか |
| 契約書の整備 | 契約内容が文書化され、工期・支払い・瑕疵責任などが明確になっているか |
| 補助金申請サポート | 豊島区の除却助成制度に詳しく、申請手続きに対応できる実績があるか |
安さだけで業者を決めてしまうと、後に近隣クレームや追加費用などで後悔するケースもあります。
信頼と実績、説明力のある業者を選びましょう。
まとめ:空き家対策と補助金で解体を前向きに
豊島区では、空き家率が東京都内で最も高く、今後さらに深刻化することが予想されています。放置された空き家は、近隣への悪影響だけでなく、資産価値の低下や管理リスクの増大にもつながります。ですが、豊島区では除却助成などの補助制度が整っており、これらを活用することで費用負担を抑えながら、安全・安心な解体が可能です。
早めに解体を検討し、補助金制度を活用することが、空き家問題の解決と地域貢献にもつながります。
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