解体工事の発注前に「見積書」を出してもらっても、どのような点に注目すべきかわかりにくいのではないでしょうか?
複数業者から見積書を出してもらっても業者の良し悪しを判断しにくく、結果的に「一番安い業者」に発注してしまいがちです。しかし「安い業者が良い業者とは限らない」ので注意しなければなりません。
今回は解体業者の見積書の見方や内訳、チェックポイントを11個ご紹介しますので、これから解体工事を発注する予定のかたはぜひ参考にしてみて下さい。
1.良い見積書と悪い見積書の特徴
見積書を見るとき、どうしても「金額」に目がいってしまいがちですが、業者の良し悪しは「金額」だけでは決まりません。
まずは典型的な「良い見積書」と「悪い見積書」の見分け方をお伝えします。
1-1.良い見積書の例
良い見積書は、基本的に「費用の内訳が細かく」書かれています。
「仮設工事費」「解体工事費」「廃棄物の処分代」「家屋内残留物撤去費用」「届出や手続費用」「警備員の配置費用」など、細かく記載されている業者は信用をおけると考えましょう。
丁寧な業者は見積書と一緒に工事内容やサービスの説明書を渡してくれるケースもあります。
1-2.悪い見積書の例
悪い見積書には、ほとんど工事内容の内訳が書かれていません。
「解体工事一式」などとだけ書かれていて総額が表示されており、何にどのくらいの費用がかかるのかわからない見積書が典型です。
そういった業者は経理も営業もずさんな可能性が高く、工事も丁寧に行ってくれるとは期待できません。追加費用を請求されるケースも多々あります。
2.見積書の見方や解体工事費用の仕組み
見積書が提出されたとき、「さまざまな項目があってわかりにくい」と感じるかたが多数いらっしゃいます。以下では解体工事の見積書の基本的な読み方や仕組みについてご説明します。
2-1.総額
見積書には、まず「総額」が書かれています。
総額は「税込」表示が基本ですが、ときには「税別」で表記されているケースもあるので注意しましょう。税別で表記されている場合、実際に払う金額はもっと高くなってしまいます。
今は国税庁の通達により税込表示が標準とされているので、税別で表記されている業者はコンプライアンス意識が低い可能性もあります。
2-2.費用の基本的な計算方法
解体工事の費用は、以下のように計算します。
解体工事費用の総額=建物の解体工事費用+付帯物費用+その他の費用
つまり「建物そのものを解体する費用」と「付帯物を撤去する費用」と「それ以外の諸経費や付随工事の費用」の合計額が工事総額となります。
付帯物の費用の例
- 土間コンクリートの除去費用
- 樹木や庭石の除去費用
- ブロック塀の撤去費用
- 建物内の残留物の処理費用
その他の費用の例
- 仮設工事費用
- 産業廃棄物の処分費用
- 届出や手続きにかかる費用
- 諸経費
- 警備員配置費用
3.解体工事費用の内訳と確認事項
次に解体工事費用の内訳やよくある費目とそれぞれの確認事項を解説します。
3-1.建物本体の解体費
「建物本体の解体費用」は解体費用のメインとなる部分で、建物そのものを取り壊すためにかかる費用です。
「単価×数量」で計算されるのが通常ですが、数量は「平方メートル」で表記される場合と「坪」で計算されるケースがあります。複数の見積もりを比べるときには、どちらの表記になっているのか確認し、同じ単位で比較しましょう。
単価の相場は建物の構造によっても異なるので、一概にいくらとはいえません。
「取り壊し費用」「本体工事費」と表記されるケースもあります。
解体費用が丁寧に書かれている見積書のパターン
業者によっては単に「解体費用」とするのではなく、「内部解体」と「外部解体」に分けて表記されているケースもあります。
内部解体とは、建物解体する前に行う内部におかれた残置物撤去作業です。外部解体は建物の躯体を重機等の機械で壊す作業をいいます。建物の基礎部分の解体作業を分けて表記する丁寧な業者もあります。
3-2.仮設工事費
仮設工事費は、解体工事を行うために必要な「足場」や「防音・防災シート」などの設置費用をいいます。足場を持ち込むための運搬費用や通路の地盤が悪いときに使用する「敷鉄板」なども仮設工事費に含まれます。
足場や養生シートなどの数量が示されるケースが多いので、建物や敷地の面積と比べて数量が多くなりすぎていないか、チェックしましょう。
3-3.付帯工事費
付帯工事は、建物の本体部分以外の作業にかかる費用です。
家やアパートなどを解体するときには、建物だけではなくブロック塀やフェンス、浄化槽やカーポート、物置や納屋などの撤去が必要になるケースが多々あります。こういったものの撤去や除去にかかる費用が「付帯工事費」です。
「付帯工事費」として一体的に表記するのではなく「ブロック塀解体」「土間コンクリート解体」「庭石撤去費用」など、分けて表記する業者もあります。反対に「建物本体の取り壊し費用」と「外構物の撤去費用」をまとめて表記する業者もあります。
それぞれの費目を別表記している業者の方が丁寧といえるでしょう。
付帯工事費の計算方法は「単価×数量」です。具体的な金額は撤去する物の種類によって異なるので、一概にいくらが相場とはいえません。
3-4.設備撤去費
電気やガス、水道や電話など、ライフラインを撤去する費用です。
多くの場合、無料で電力会社や電話会社が撤去してくれるので、負担は生じません。
3-5.廃棄物処分費
廃棄物処分費は、解体作業によって廃棄物を処分するための費用です。
廃棄物は「産業廃棄物」と「一般廃棄物」に分けられます。
産業廃棄物の例
- 木くず
- 瓦片
- コンクリートガラ
一般廃棄物の例
- エアコン、テレビなどの家電
- テーブルやベッドなどの家具
廃棄物の収集や運搬には許可を要するので、事前に解体業者が産業廃棄物収集運搬にかかる許可を取っているか確認しましょう。
解体工事業者の許可について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
解体工事業を行う場合には、「建設業の許可」を受けるか「解体工事業の登録」をしなければなりません。要件を満たさずに許可なしで解体工事を行っていると、罰則が適用される可能性もあります。どのようなケースでどういった許認可が必要なの[…]
なお解体工事業者が下請業者に依頼する場合、下請業者が許可をとっていれば解体工事業者自身が許可を取得していなくても合法です。
3-6.警備員配置費用
建物解体の際、警備員を配置すべきケースがあります。
たとえば車や人の往来が多い道路沿いの建物、通学路沿いの建物、車の侵入を防がなければならない場所の建物を取り壊すときには、交通整理のためにガードマンが必要となるでしょう。
見積書には警備員の配置費用も記載されます。
3-7.駐車場代
敷地内に駐車スペースがない場合、近くに駐車場を借りなければなりません。その場合、駐車場代が見積書に含まれます。
もしも敷地内に駐車スペースがあるにもかかわらず駐車場代が見積書に記載されていたら不当請求の可能性があるので、業者に確認してみてください。納得できる説明を受けられないならそういった業者に発注しない方がよいでしょう。
3-8.事務費、届出費用
解体工事に際し、届出が必要になる場合があります。
たとえば建物の延べ床面積が80㎡を超過する場合、役所へ届け出なければなりません。
工事で道路を占有するなら警察署へ道路占有許可の申請を行う必要もあります。
このような事務処理や届出にかかる費用も見積書に記載されます。
3-9.諸経費、会社経費
その他の諸経費は「諸経費」「会社経費」などと一括して記載されるのが通常です。
「諸経費」と一括して書かれていると「何の費用なのか?」と疑問をもってしまうかたもおられますが、一概に「諸経費」と書かれているから悪質業者というわけではありません。
他の費目に入れられない細かい経費が発生するのもやむをえないからです。
他の内訳が細かく書かれていて諸経費や会社経費が少額な場合、あまり気にしなくて良いでしょう。
一方、諸経費が総額の10%を超えるなど高額な場合、業者に内訳や理由を確かめてみるべきです。明確な回答がなければ発注は差し控える方が安心でしょう。
4.見積書が出てきたときの11個のチェックポイント
解体業者から見積書を受け取ったら、以下の11個の点をチェックしてみてください。
4-1.「~一式」などと概算だけではなく、費目の内訳が丁寧に記載されているか?
各費目の記載が細かく分かれていて明細が明らかな業者は信用できます。
4-2.建物本体の解体費用と付帯物やその他の費用など項目が分けられて記載されているか?
分けられて記載されている見積書は丁寧で信頼できます。
4-3.整地費⽤が記載されているか?
含まれていない場合、別途請求される可能性があります。
4-4.他の業者の見積書と比べてあまりに高額になっていないか?
1社だけ高額な場合、相場と離れている可能性が高いので発注しない方がよいでしょう。
4-5.税込み表記されているか?
基本的に税込み表記するのが現在のルールとなっています。
4-6.現地調査を行った上で⾒積書を出しているか?
現地調査を行う業者の方が見積もりの数字に根拠があるといえ、信頼に足ります。
4-7.必要な工事が含まれているか?不要な工事や費用が含まれていないか?
必要な工事が含まれていないと、希望通りに工事が行わなかったり追加費⽤が発⽣したりする可能性があります。反対に不要な費用が含まれていたら、事情を確かめなければなりません。明確な説明を受けられないなら発注を差し控えましょう。
4-8.建物の平米数や坪数にズレがないか?
大幅なズレがあるなら理由を確認し、明確な答えが返ってこないなら発注を控えるべきです。
4-9.工事後の取り壊し証明書の発行費用が含まれているか?
含まれていない場合、別途請求される可能性があります。
4-10.事故が起こったときの補償は含まれているか?
含まれている方が安心です。記載がない場合、個別に確認してみましょう。
4-11.営業マンの態度も重要
見積書が見やすいのはもちろんのこと、担当の営業マンの態度も重要です。
親切に誠意をもって説明をしてくれる業者であれば、信頼して任せられるでしょう。
説明が適当であったりぞんざいな態度をとったりする業者に発注するとトラブルになりやすく、何かあったときにも対応してもらえない可能性が高くなります。
数社に見積もりをとり、信頼できる態度の営業マンが担当してくれる業者を選びましょう。
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