江東区では、利便性の高い都心エリアでありながら、空き家の増加が少しずつ社会問題として顕在化しつつあります。
高齢化や相続放棄、老朽化した建物の管理放置などが背景にあり、空き家を放置することによる景観や安全面の懸念も増えています。
本記事では、江東区における空き家の現状と背景、解体費用の相場、そして活用できる補助金制度について詳しく解説していきます。
江東区は今「空き家」が増えている?
東京都心からのアクセスが良く、再開発も進む江東区。
しかし、そうした都市部であっても空き家問題は例外ではありません。
高齢化や相続放棄といった社会的背景に加え、老朽建物の維持管理の難しさ、建て替えに不利な敷地条件などが複合的に影響し、空き家の増加が課題となっています。
最新の空き家率データ
まずは、江東区の空き家の実態を把握するため、総務省の住宅・土地統計調査に基づくデータを確認しましょう。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 総住宅戸数 | 298,230戸 |
| 空き家戸数 | 26,950戸 |
| 空き家率 | 9.04% |
| 放置空き家戸数 | 6,820戸 |
| 放置空き家率 | 2.29% |
江東区の空き家率は9.04%と、東京都内ではやや低めですが、実数としては2万6,000戸以上もの空き家が存在しています。これは無視できない規模であり、今後も高齢化や人口動態の変化によって増加する可能性があります。
なぜ空き家が増えているのか
江東区で空き家が増加する背景を、全国共通・地域特有の視点から以下のように分類できます。
| 要因分類 | 内容 |
|---|---|
| 高齢化 | 高齢者の施設入所や死亡後、相続されず空き家化するケースが増加。 |
| 相続問題 | 相続登記の未実施や放棄によって、所有者不明のまま放置される物件が存在。 |
| 土地条件 | 再建築不可物件、狭小地、私道接道などにより建て替えが困難で放置されやすい。 |
| 建物老朽化 | 建築後40年以上経過した木造住宅が多く、修繕・維持コストが高くなっている。 |
| 市場流通の難しさ | 家財の整理が困難、買い手がつかない、近隣との関係性などにより、売却・賃貸が進まない。 |
このように複数の要因が重なって、江東区では長期間放置された空き家(放置空き家)が2.29%に達しており、地域課題として顕在化しています。
江東区の解体補助金情報
江東区では、空き家の増加とともに、老朽化による倒壊リスクや地域の景観悪化、治安への影響を未然に防ぐための様々な対策を講じています。
特に老朽空家を対象にした除却支援制度や、所有者向けの相談体制の整備など、具体的かつ実効性のある施策が進められています。
東京都 江東区 の補助金情報
老朽建築物除却助成事業
| 事業・条令名 | 老朽建築物除却助成事業 |
|---|---|
| 制度の概要 | 区では、老朽化した木造住宅の除却(解体)工事費用の一部を助成することにより、除却及び建替えを誘導し、市街地の不燃化及び耐震化を促進しています。 |
| 対象申請者 | 建築物を所有する個人(共有者がいる場合は、その代表者) (注釈)前年度の住民税を滞納していないこと |
| 対象建築物の概要 | 【助成対象となる木造住宅】 着工時期:昭和56年5月31日以前 建物の構造:木造または木造を含む混構造(鉄骨、コンクリートブロックなど) 建物用途:戸建て住宅・長屋・共同住宅(住宅以外の部分がある場合も可) 建物の耐震性:以下のいずれかにより、耐震性が十分でないと判断されるもの 1.所有者による問診「耐震診断問診結果報告書」 2.専門家の作成する耐震診断結果 【以下の建物は助成対象外となります】 ・江東区民間建築物耐震改修等助成、江東区特定緊急輸送道路沿道建築物耐震化促進事業助成を受けて耐震改修を行ったもの ・国、東京都等が実施する補助事業により、除却工事に相当する分の費用が助成されるもの ・1年以内に江東区ブロック塀等撤去助成を受けたブロック塀等と同一敷地内にあるもの ・その他、区長が不適当と認めるもの |
| 補助金額概要 | 除却工事に要する費用の1/2 (注釈)同一敷地内の物置、門・塀等の撤去は助成対象となります (注釈)地中障害物や家具等の残置物等の撤去費、除却後の新築工事費は助成対象外です 助成上限額:100万円 |
| 定員 | 無し |
| 業者指定 | 無し |
| 問い合わせ先 | 都市整備部 安全都市づくり課 安全都市づくり係 |
ブロック塀等撤去助成事業
| 事業・条令名 | ブロック塀等撤去助成事業 |
|---|---|
| 制度の概要 | 危険性のあるブロック塀等を撤去し、地震時における通行人の安全性の向上を図りましょう。 |
| 対象申請者 | 助成対象者は、以下の(1)または(2)です。 1.助成対象となるブロック塀等の全部撤去工事(注釈)を実施しようとする個人又は法人で、以下の要件を満たすこと ・ブロック塀等の存する敷地又は敷地内の建物を所有している(土地または建物の所有者) ・住民税又は法人住民税を滞納していない 2.助成対象となるブロック塀等を管理し、全部撤去工事を実施しようとするマンション管理組合 (注釈)全部撤去工事とは、助成対象となるブロック塀等について、少なくとも地盤面より上の部分を全て撤去することです。 |
| 対象建築物の概要 | 補強コンクリートブロック造の塀、組積造の塀、万年塀、これらに類する構造の塀で、次の要件を全て満たすもの ・建築基準法第42条に規定する道路(注釈1)に面していること(隣地境界にある塀は助成対象外) ・地面からの高さが1.2メートル以上であること ・安全性を確認できないこと(申請時の提出書類「安全性のチェックリスト」にて判断します) その他、対象要件について不明な点があればご相談ください。 (注釈1)道路種別については江東区建築情報閲覧システムの「指定道路マップ」または建築課調査係にて確認ができます。 |
| 補助金額概要 | ブロック塀等の撤去工事に要する費用(千円未満切り捨て) 上限25万円 |
| 定員 | 無し |
| 業者指定 | 無し |
| 問い合わせ先 | 都市整備部 安全都市づくり課 安全都市づくり係 |
アスベスト分析調査費助成
| 事業・条令名 | アスベスト分析調査費助成 |
|---|---|
| 制度の概要 | アスベストによる健康被害が社会問題化する中、区民の不安の解消と健康・安全の確保に向け、区内の建築物におけるアスベスト分析調査費用の一部を助成します。 令和8年3月31日までに、完了報告書及び助成金請求書の提出が可能な調査が対象となります。 |
| 対象申請者 | ・区内に建築物を有する中小企業、学校法人、社会福祉法人、医療法人等(国、地方公共団体その他これに準じる団体を除く) ・区内に建築物を有する個人 ・区内にある分譲共同住宅の管理組合 |
| 補助金額概要 | 【助成対象経費】 アスベストを含有している可能性のある吹付け材又は保温材等が使用されている区内の建築物について、専門調査機関によるアスベスト分析調査に要する費用 【助成内容】 ・調査費用の2分の1以内(千円未満切捨て) ※助成限度額は10万円 ・建築物1棟につき1回限り |
| 定員 | 無し |
| 業者指定 | 無し |
| 問い合わせ先 | 環境清掃部 環境保全課 指導係 |
不燃化特区支援制度(老朽建築物の除却に対する助成)
| 事業・条令名 | 不燃化特区支援制度(老朽建築物の除却に対する助成) |
|---|---|
| 制度の概要 | 一定の要件を満たした老朽建築物(耐用年数の3分の2を経過している建築物)を除却する場合に、除却費の一部を助成しています。 |
| 対象申請者 | ・土地所有者等※ ・住民税を滞納していない方 ※土地の所有権又は建物の所有を目的とする地上権又は賃借権を有するもので次に掲げるもの(複数人いる場合はその代表者) 個人、中小企業者(中小企業基本法第2条第1項に規定する中小企業者)、一般社団法人又は一般財団法人、公益社団法人又は公益財団法人、特定非営利活動法人 |
| 対象建築物の概要 | 不燃化特区内に所在し、耐用年数の3分の2※を経過している建築物 ※耐用年数の3分の2:例えば、木造の住宅15年、鉄筋コンクリート造の住宅32年 耐用年数は建物の構造や用途により異なります。詳しくはお問い合わせください。 |
| 補助金額概要 | ・「除却工事に実際にかかった費用(助成対象分※)」または「延べ床面積(㎡)×2.3万円/㎡」のいずれか少ない額(千円未満切り捨て) ・上限額230万円まで ※建築物及びこれに付随する工作物の解体除却工事費用及び除却後の敷地の整地費用(地中障害物の除却費や植栽の撤去費などは対象外) |
| 定員 | 無し |
| 業者指定 | 無し |
| 問い合わせ先 | 都市整備部安全都市づくり課不燃化推進係 |
不燃化特区支援制度(固定資産税・都市計画税の減免)
| 事業・条令名 | 不燃化特区支援制度(固定資産税・都市計画税の減免) |
|---|---|
| 制度の概要 | 老朽住宅を除却した後の土地や不燃化建替えを行った住宅に対して、一定の要件を満たした場合は、固定資産税・都市計画税の減免が受けられます。 |
| 対象建築物の概要 | ・除却する老朽住宅が、耐用年数の3分の2を経過していること※ ・令和8年3月31日までに老朽住宅が滅失していること ・老朽住宅を除却した日の土地所有者が、減免を受けようとする年の1月1日時点において土地を引き続き所有していること ・防災上有効な空地として、江東区から土地の適正管理証明を受けていること ※除却前に区から認定を受けている必要があります。 |
| 補助金額概要 | 【減免される税額】 老朽住宅を除却した後の土地にかかる固定資産税・都市計画税の8割 【減免期間】 老朽住宅を除却した翌年度から最長5年度分 |
| 定員 | 無し |
| 業者指定 | 無し |
| 問い合わせ先 | 東京都江東都税事務所固定資産税課固定資産税班 |
江東区の解体費用相場はいくら?
空き家を解体する際、気になるのがその費用です。
江東区を含む東京都内では、立地や建物の構造により費用に大きな差が出る傾向があります。
この章では、構造ごとの坪単価や建物規模別の費用目安を紹介しつつ、どのような条件で費用が上下するかについて解説します。
建物の構造別にみた費用目安
東京都内で解体を行う際の費用は、主に「建物の構造(木造・鉄骨造・RC造)」と「延床面積(坪数)」に左右されます。
江東区でも30坪前後の住宅が多いため、この規模感を目安に考えてみましょう。
木造住宅(東京都内の目安)
| 坪数帯 | 坪単価目安 | 概算費用(例) |
|---|---|---|
| 10坪未満 | 約6.3万円/坪 | 約63万円 |
| 10坪台 | 約7.4万円/坪 | 約111万円(15坪) |
| 20坪台 | 約6.6万円/坪 | 約165万円(25坪) |
| 30坪台 | 約6.1万円/坪 | 約183万円(30坪) |
| 40坪台 | 約5.9万円/坪 | 約236万円(40坪) |
| 50坪台 | 約5.9万円/坪 | 約295万円(50坪) |
| 60坪台 | 約6.0万円/坪 | 約360万円(60坪) |
| 70坪以上 | 約5.3万円/坪 | 約371万円(70坪) |
鉄骨造・RC造(木造比1.5~2倍が目安)
- 鉄骨造(S造):約9万円〜13万円/坪
- RC造:10万円〜15万円/坪
構造によって解体作業に必要な重機や工数が異なるため、同じ坪数でも費用が大きく変動する点に注意が必要です。
費用が高くなる・安くなるケース
解体費用は建物の構造や広さだけでなく、立地条件や現場状況によっても大きく変動します。以下に、費用が高くなる・安くなる主なケースを整理します。
| 要因 | 費用が高くなるケース | 費用が安くなるケース |
|---|---|---|
| 立地・道路幅 | 道が狭く重機が入らない、住宅密集地で養生作業が多い | 幅広い道路に面しており重機の搬入が容易 |
| 構造・階数 | 鉄骨造・RC造、3階建て以上の建物 | 木造、平屋や2階建てで作業しやすい構造 |
| 残置物の有無 | 家財道具や廃材が大量に残っている | 内部が空の状態、残置物処理が不要 |
| 地中障害物 | 地中に基礎・井戸・浄化槽などがある | 地中障害物がなく掘削不要 |
| 敷地の形状・広さ | 狭小地、変形地、隣接建物との距離が近い | 敷地が広く、作業スペースに余裕がある |
| アスベストの有無 | 含有建材がある場合、調査・除去費用が加算 | 非該当で追加費用不要 |
たとえば、同じ30坪の木造住宅でも、狭小地にあり隣家との距離が近く、残置物やアスベストがある場合、追加で数十万円のコストがかかることもあります。事前に現地調査を受け、正確な見積もりを取ることが重要です。
解体工事価格は上昇傾向
木造住宅の解体費用は、ここ数年で全国的に上昇しています。
下記グラフでは、各年度の平均的な傾向をもとに算出した概算値を示しており、実際の費用は、建物の構造・立地・工事条件などによって大きく変動するため、あくまで目安として参考にしてください。
解体工事をご検討の方は、早めに見積もりを取ることをおすすめいたします。
概算シミュレーター
該当市区町村を選択すると、補助金を含めたおおよその解体工事費用が分かります。
このシミュレーターは、あくまで目安を知るためのツールです。
実際の費用は建物の構造や立地条件などによって変わるため、正確な金額を知りたい方は見積もりを依頼するのがおすすめです。
解体費用を抑えるポイント
解体費用は建物の条件や立地によって変動しますが、工夫次第でコストを抑えることも可能です。この章では、無駄な出費を防ぐために知っておきたい「相見積もりの活用方法」や「信頼できる業者の選び方」について解説します。
相見積もりの重要性
解体費用を適正に、かつ無駄なく抑えるために「相見積もり(複数業者からの見積もり取得)」は欠かせません。以下に、相見積もりを行うことの具体的なメリットをまとめました。
| 観点 | 相見積もりをするメリット | ユーザーにとっての効果 |
|---|---|---|
| 価格比較 | 複数社の金額を比べられる | 不当に高い見積もりを避け、適正価格で契約できる |
| 内訳の透明性 | 見積書の項目(人件費・重機費・処分費など)を比較 | 不明瞭な費用や割高な項目に気づける |
| リスク回避 | 安すぎる業者の「後出し請求」を防げる | 工事後に高額な追加請求が来るリスクを回避 |
| 補助金対応 | 自治体が指定する条件を満たす業者を選べる | 助成金の申請要件をクリアできる可能性が高まる |
| 対応の比較 | 現地調査の丁寧さ、説明力、提案力の差がわかる | 信頼できる業者を見極められる |
相見積もりは「価格交渉」のためだけでなく、「失敗しない業者選び」のための重要なプロセスです。1社だけで決めるのは避け、最低でも2~3社の比較をおすすめします。
業者選びの注意点
解体工事は専門性が高く、業者の対応力や経験が仕上がりに直結します。
価格だけで決めると、近隣トラブルや追加費用の発生といった問題につながることもあるため、以下のポイントを押さえて業者を選ぶことが大切です。
| チェック項目 | 内容 | なぜ重要か? |
|---|---|---|
| 建設業許可や産廃収集運搬業許可 | 解体工事に必要な許可を保有しているか確認 | 無許可業者は法的リスクや不正処分の恐れがある |
| 見積書の明細が明確か | 内訳項目や条件が詳細に記載されているか | 不明瞭な見積もりは追加費用やトラブルの元になる |
| 現地調査の丁寧さ | 事前の確認が十分か、説明が具体的か | 現地をしっかり見ない業者は、後から追加請求しがち |
| 近隣への配慮があるか | 養生、防音、挨拶などの対応計画があるか | 苦情やクレームを未然に防ぐことができる |
| 補助金対応の実績 | 書類作成・写真提出などに慣れているか | 助成金申請をスムーズに進められる可能性が高い |
信頼できる業者を選ぶことは、コストを抑える以上に「安心して任せられる」ことにつながります。実績や口コミ、対応の誠実さなどもあわせて判断材料としましょう。
まとめ:空き家対策と補助金で解体を前向きに
江東区では、住宅の9%以上が空き家となっており、そのうち約6,800戸が放置空き家に該当します。老朽化や相続問題、立地条件の難しさなどが複合的に影響し、問題が深刻化しています。
しかし、江東区では除却費用の助成制度や空き家対策計画が整備されており、条件を満たせば最大50万円の補助金を受けられるなど、所有者が前向きに行動できる環境が整いつつあります。
解体費用は構造や立地によって差が出ますが、相見積もりや信頼できる業者選びを行うことで、適正価格で安全に解体を進めることが可能です。放置によるリスクを避けるためにも、早めの対応が大切です。
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