東京都多摩地域の中心都市・八王子市では、空き家の増加が深刻な課題となっています。
全国的な傾向と同様に、高齢化や相続放棄、老朽化した住宅の放置などが要因となり、市内全体で約33,650戸の空き家が存在すると推定されています。
「解体するか」「活用するか」と迷っている空き家所有者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、八王子市の空き家の現状や解体費用の相場、補助金制度などをわかりやすく解説し、適切な空き家対策のヒントをお届けします。
八王子市は今「空き家」が増えている?
八王子市では、都内でも上位に入る空き家数・空き家率を記録しています。
都市部でありながら高齢化や世代交代が進む地域も多く、空き家が年々増加傾向にあります。
最新の空き家率データ
八王子市における空き家の状況は、東京都内でも特に深刻とされています。2023年の推計によると、八王子市の空き家数は33,650戸、空き家率は11.09%に達しており、東京23区を含む市区町村の中でも上位にランクインしています。
さらに、放置されたまま管理がされていない「放置空き家」も約7,900戸(2.60%)あるとされ、地域の安全・景観・防災の観点からも対応が急務となっています。
以下に、八王子市の住宅に関する主要な統計を表にまとめました。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 空き家数 | 33,650戸 |
| 空き家率 | 11.09% |
| 放置空き家数 | 7,900戸 |
| 放置空き家率 | 2.60% |
| 住宅総数 | 303,470戸 |
これらの数値からも、八王子市が抱える空き家問題の規模の大きさが明らかです。
なぜ空き家が増えているのか
八王子市で空き家が増加している背景には、地域特有の複数の要因が存在します。
以下の表に、主な要因とその具体的な内容をまとめました。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 高齢化と相続放棄 | 高齢者の施設入所・死亡後に空き家化。相続人が管理・処分できず放置されるケースが増加。 |
| 老朽住宅の増加 | 昭和~平成初期に建てられた木造住宅が築40年以上となり、住み替えや解体の判断が必要に。 |
| 不便な立地条件 | 駅から遠い・坂道が多い・狭い道路沿いなど、買い手・借り手がつきにくい物件が多い。 |
| 活用手段の不足 | 売却や賃貸活用に不安を持つ所有者が多く、具体的な対処が先送りされがち。 |
このように、複数の要因が絡み合って、八王子市内で空き家が増えていることがわかります。
八王子市の解体補助金
八王子市では、増加する空き家への対応として、以下のような空き家対策事業を実施しています。市民の安心・安全な住環境を守るために、相談窓口の設置や補助金制度など、様々なサポート体制が整えられています。
東京都 八王子市 の補助金情報
八王子市未耐震空き家除却支援補助金
| 事業・条令名 | 八王子市未耐震空き家除却支援補助金 |
|---|---|
| 制度の概要 | 八王子市では、安全で安心な暮らしを守ること及び宅地の流通の促進を図るため、空き家の除却に要する費用の一部を補助します。 |
| 対象事業・工事の概要 | 相続により取得した空き家の除却工事で次の要件に適合するもの(補助金の交付決定前に契約をしていないものに限る) ・相続発生日から10年を経過する日の属する年度の2月末日までに除却を完了するものであること ※相続発生日以前から継続して補助対象家屋に居住していた者が当該家屋で亡くなったことにより空き家となった場合については、居住者の死亡日を相続発生日に読み替えるものとする。 ・次のいずれかに該当すること 1.申請日が相続発生日から3年が経つ年の12月31日を超えていること 2.相続発生日において、当該家屋に被相続人以外の者が居住していること 3.申請日時点において、「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円控除)」に該当しないことが明らかに認められること 4.その他、市長が適当と認める事由があること ・空き家のすべてを解体する工事であること ・空き家の除却に係る他の補助制度から補助金を受けていないこと |
| 対象申請者 | ・相続により取得した空き家の所有者であること ・市税等を滞納していないこと ・八王子市暴力団排除条例第2条に規定するものでないこと |
| 対象建築物の概要 | ・昭和56年5月31日以前に建築されている住宅であること ・耐震診断又は以下の「旧耐震基準の木造住宅の除却における容易な耐震診断調査票」により、耐震性が不足していると判定された住宅であること ・未登記でないこと ・相続の登記が完了していること ・個人が所有していること ・相続の開始又は老人ホーム等への入所の直前において、被相続人の居住の用に供されていた住宅であること ・相続発生日から申請日まで事業の用、貸し付けの用または居住の用に供されていないこと ※相続発生日において被相続人以外の者が居住していた場合は、その者が申請日時点で当該空き家に居住していないこと ・「空家等対策の推進に関する特別措置法」による勧告を受けた空き家でないこと |
| 補助金額概要 | ・除却工事にかかる経費の3分の2以内 ・1戸当たりの上限は以下の表のとおり 相続発生日から3年を経過する日の属する年度まで:1,000,000円 相続発生日から5年を経過する日の属する年度まで:500,000円 相続発生日から10年を経過する日の属する年度まで:250,000円 ※補助金の交付額は、対象家屋の延べ面積等によっても変動します。詳しくはお問い合せください。 |
| 定員 | 無し |
| 業者指定 | 無し |
| 問い合わせ先 | まちなみ整備部住宅政策課 |
八王子市ブロック塀撤去等補助金
| 事業・条令名 | 八王子市ブロック塀撤去等補助金 |
|---|---|
| 対象事業・工事の概要 | 市に登録された市内の施工業者が行う工事で、次に定めるもの。ただし、土地又は建物の販売を目的として実施するものは除く。 1.撤去工事撤去工事対象のブロック塀等の全てを撤去する工事 ※ただし、ブロック塀診断の結果一部を撤去することにより判定が適合となると認められる場合に限り、その一部を撤去する工事を含む。 2.撤去に伴う新設工事上記1の撤去工事と併せて行う塀の新設で、法令に定める基準に適合する方法により設置する工事。 |
| 対象申請者 | ブロック塀等の所有者又は管理者 |
| 対象建築物の概要 | コンクリートブロック塀、石塀、万年塀及びその他これらに類する構造の塀で、次に掲げる要件を満たすものとする。 ※塀以外の工事(土留め・擁壁部分、門扉・門柱、インターホン設置等)は対象外。 1.市内に所在するもの。 2.避難路に面したブロック塀等で道路地盤面からの高さが1.0mを超え、「既存のブロック塀等の簡易点検シート」による点検の結果、不適の項目があるもの。 3.ブロック塀等と避難路との間に通行が不可能な水路や植栽帯等が設置されている場合は、ブロック塀等の高さがブロック塀等と避難路境界までの水平距離より高いもの。 ※避難路次のア又はイのいずれかに該当する道路をいう。 ア.東京都耐震改修促進計画で定める緊急輸送道路(特定緊急輸送道路及び一般緊急輸送道路) イ.各市立小学校が指定する通学路 |
| 補助金額概要 | 次に掲げるもののうち最も低い額とする。 1.補助対象工事の経費の3分の2 2.撤去にかかる避難路に面するブロック塀等の長さ(当該ブロック塀等の存する敷地が避難路に面する部分の長さを上限とする。)に1m当たり30,000円を乗じて得た額 3.30万円 |
| 定員 | 無し |
| 業者指定 | 令和7年度居住環境を整備するための体制づくりに関する協定書に掲げる指定団体に所属し、かつ指定団体から市へ推薦され、市に登録された市内の施工業者。 ※指定団体から推薦された市内の登録施工業者一覧表の「4.外構工事(ブロック塀・バルコニー等)」欄に〇がある業者が該当です。 |
| 問い合わせ先 | まちなみ整備部住宅政策課 |
八王子市の解体費用相場はいくら?
空き家の解体を検討する際、最も気になるのが「費用はいくらかかるのか」という点です。
建物の構造や立地条件、面積によって解体費用は大きく異なりますが、八王子市では東京都平均の費用感をベースに考えることができます。この章では、構造別の坪単価や坪数別の目安、費用が変動する要因について詳しく見ていきます。
建物の構造別にみた費用目安
八王子市で空き家解体を行う際の費用は、主に建物の構造によって異なります。
以下に、東京都内での解体費用の相場を基にした、構造別の目安を示します。
これにより、予算計画を立てやすくなるでしょう。
| 構造 | 坪単価(目安) | 30坪の解体費用例 | 50坪の解体費用例 |
|---|---|---|---|
| 木造 | 約6.3〜7.5万円/坪 | 約189万〜225万円 | 約315万〜375万円 |
| 鉄骨造(S造) | 約8.0〜10.0万円/坪 | 約240万〜300万円 | 約400万〜500万円 |
| RC造(鉄筋コンクリート) | 約10.0〜12.0万円/坪 | 約300万〜360万円 | 約500万〜600万円 |
※上記の費用例はあくまで目安であり、実際の費用は現場の状況や業者によって異なります。詳細な見積もりを取得する際は、複数の業者に依頼することをおすすめします。
これらの坪単価は、一般的な解体工事の目安となります。
解体業者の選定時には、必ず見積もりの内訳を確認しましょう。たとえば、木造の家でも、屋根や基礎がしっかりしている場合や、特殊な廃棄物(アスベスト等)が含まれている場合は、費用が高くなることがあります。
費用が高くなる・安くなるケース
解体費用は、単に建物の坪数や構造だけで決まるわけではなく、さまざまな要因によって増減します。以下の表で、解体費用が高くなる場合と安くなる場合の代表的な要因を整理しました。
| 要因 | 費用が高くなるケース | 費用が安くなるケース |
|---|---|---|
| 立地条件 | 交通が不便で車両進入が困難な場所 | 交通の便が良く車両進入が容易な場所 |
| 構造・建物の状態 | RC造や鉄骨造の建物、老朽化が進んでいる場合 | 木造住宅、比較的新しい建物 |
| 残置物の量 | 家具、家電、ゴミなどの残置物が多い場合 | 残置物が少ない、もしくは片付け済みの場合 |
| 近隣配慮・養生費用 | 近隣住宅との距離が近く、騒音や振動対策が必要な場合 | 周囲に住宅が少なく、騒音対策が不要な場合 |
| アスベストの有無 | アスベストを含む建材がある場合 | アスベストを含まない建材のみの建物 |
| 撤去方法・特殊な処理 | 解体方法に特殊な技術が必要、または産業廃棄物が多く出る場合 | 標準的な手順で進められる場合 |
このように、立地条件や建物の状態、残置物の量、近隣配慮など、複数の要素が解体費用に影響を与えることがわかります。これらをしっかり確認し、見積もり時に業者と十分に相談することが費用を抑えるポイントとなります。
解体工事価格は上昇傾向
木造住宅の解体費用は、ここ数年で全国的に上昇しています。
下記グラフでは、各年度の平均的な傾向をもとに算出した概算値を示しており、実際の費用は、建物の構造・立地・工事条件などによって大きく変動するため、あくまで目安として参考にしてください。
解体工事をご検討の方は、早めに見積もりを取ることをおすすめいたします。
概算シミュレーター
該当市区町村を選択すると、補助金を含めたおおよその解体工事費用が分かります。
このシミュレーターは、あくまで目安を知るためのツールです。
実際の費用は建物の構造や立地条件などによって変わるため、正確な金額を知りたい方は見積もりを依頼するのがおすすめです。
解体費用を抑えるポイント
解体工事は一度決定すると、予算オーバーしないか心配になる大きな費用です。
しかし、いくつかの工夫でその費用を抑えることができます。ここでは、解体費用を効率的に抑えるための具体的なポイントを、実践的に解説していきます。
相見積もりの重要性
解体費用を抑えるための最も効果的な方法のひとつが「相見積もり」を取ることです。複数の業者に見積もりを依頼することで、費用の相場感を把握できるとともに、より適正な価格での解体工事を実現できます。
| ポイント | 詳細 |
|---|---|
| 価格の差を確認できる | 同じ内容の工事でも、業者によって料金が異なることがあります。相見積もりを取ることで、適正価格を知ることができます。 |
| 内容の透明性を確保 | 見積もり書に記載されている内容や条件を比較することで、含まれている項目(養生、廃棄物処理、アスベスト調査など)の差を明確にできます。業者によって含まれる項目が異なるため、内容をしっかり確認することが重要です。 |
| 交渉材料として活用 | 複数の見積もりを基に価格交渉を行うことで、さらに費用を削減できる可能性があります。業者に「他の業者ではもっと安い見積もりが出ている」と伝えることで、価格を下げてもらえることもあります。 |
相見積もりを取る際のポイント
| ポイント | 詳細 |
|---|---|
| 3社以上に依頼する | 1社だけでは相場がわかりません。できれば3社以上に見積もりを依頼しましょう。 |
| 見積もり内容の確認 | 見積もり書には詳細な内訳(人件費、処理費用、材料費など)が記載されていることを確認し、曖昧な項目がないかチェックしましょう。 |
| 信頼性も重視 | 価格だけでなく、業者の信頼性や過去の実績も確認して、安心して任せられる業者を選びましょう。 |
まとめ:空き家対策と補助金で解体を前向きに
八王子市では空き家の増加が深刻化しており、放置されることによる地域の安全・景観への影響が懸念されています。空き家をそのままにしておくと、老朽化や税金の負担が増え、最終的には解体が必要になることもあります。解体費用は予想以上にかかることが多いため、早めの準備と対応が重要です。
市が提供する空き家相談窓口や解体補助金制度を活用することで、解体費用を抑えつつ、空き家問題の解決に向けた一歩を踏み出すことができます。
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