愛知県西部に位置する一宮市では、繊維産業のまちとして栄えた歴史を持つ一方で、中心市街地外や住宅ストックの老朽化・空き家化が徐々に顕在化しています。
所有している空き家をそのまま放置しておくと、倒壊・火災・不法侵入・資産価値の低下などのリスクが増大します。
本記事では、一宮市における最新の空き家の現状、解体費用の目安、費用を抑えるためのポイント、そして活用できる補助制度について、解体を検討されている所有者の方に向けてわかりやすく解説します。
一宮市は今「空き家」が増えている?
一宮市は尾張地方の中核都市として発展してきましたが、近年は住宅の老朽化や人口構成の変化により空き家が徐々に増加しています。
特に市街地から外れたエリアでは、放置空き家の存在が地域課題として顕在化しており、市としても対策に乗り出しています。
最新の空き家率データ
一宮市の空き家は、住宅密集地から郊外の戸建住宅まで幅広く点在しており、年々その数は増加傾向にあります。
以下に、総務省の統計や推計をもとにした一宮市の空き家状況を整理しました。
| 指標 | 数値(推計) | 出典 |
|---|---|---|
| 空き家率 | 9.88% | 総務省/住宅・土地統計調査(e-Stat) |
| 空き家数(戸) | 16,800戸 | 同上 |
| 放置空き家率(推計) | 4.55% | 同上(放置とされる空き家) |
| 放置空き家数(戸) | 7,740戸 | 同上 |
| 総住宅数 | 169,980戸 | 同上 |
空き家率自体は全国平均(13.8%)より低いものの、住宅数が多いため空き家の絶対数が非常に多いのが特徴です。
特に老朽空き家や管理されていない物件は、防災・防犯・景観面で地域に悪影響を及ぼすリスクがあります。
なぜ空き家が増えているのか
一宮市における空き家増加の背景には、都市部ならではの住宅流通と、郊外や旧市街地の老朽住宅の管理問題が複合的に絡んでいます。
以下に主な要因をまとめました。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 高齢化と単身世帯の増加 | 高齢者のみの世帯が増え、入院・施設入所・死亡などで住む人がいなくなる。 |
| 相続放棄・管理放棄 | 相続された家屋が使い道のないまま放置され、管理コストがかさむ。 |
| 市街地への人口集中 | 若年層は交通の便が良いエリアや名古屋市内に流出し、実家が空き家化。 |
| 地価の下落と売却困難 | 売っても利益にならないため放置、または解体費用をかけたくないという判断。 |
| 空き家活用のハードル | 賃貸や売却のためのリフォーム費用が高く、二の足を踏む人が多い。 |
こうした背景により、活用されない空き家が地域の中で放置され、さらに新たな空き家を呼び込む「負の連鎖」が起きている現状があります。
一宮市の解体補助金
一宮市では、老朽化・放置された空き家をただ放任するのではなく、所有者が整理・活用を図りやすいよう、下記のような支援制度を整えています。
愛知県 一宮市 の補助金情報
一宮市老朽空き家解体工事費補助金
| 事業・条令名 | 一宮市老朽空き家解体工事費補助金 |
|---|---|
| 対象建築物の概要 | 次の条件をすべて満たす市内の空き家 1.現に使用されていない空き家で、延べ床面積の2分の1以上が居住の用に供されていたもの。ただし、空き家が長屋又は共同住宅の場合は、全戸において現に使用されていないものであること。 2.木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造又はコンクリートブロック造のいずれかであるもの。 3.住宅地区改良法第2条第4項に規定する不良住宅※と同等の空き家であるもの。 ※不良住宅:外壁の下地が露出している、屋根の瓦が落下している、床が抜けているなど、構造や設備が著しく不良であるため、居住の用に供することが不適当と判断された住宅。 |
| 補助金額概要 | 解体工事に要する費用の5分の4(上限20万円) |
| 定員 | 有り |
| 業者指定 | 無し |
| 問い合わせ先 | 住宅政策課 対策グループ |
一宮市木造住宅解体工事費補助金
| 事業・条令名 | 一宮市木造住宅解体工事費補助金 |
|---|---|
| 制度の概要 | 地震による住宅の倒壊から身を守るために、住宅の解体工事を行う方に、その費用の一部を補助します。 |
| 対象建築物の概要 | 次の条件をすべて満たす市内の木造住宅 1.1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられたもの。(プレハブ・ツーバイフォーなどを除く) 2.延べ床面積が30平方メートル以上あるもの。 3.一宮市が実施する『木造住宅無料耐震診断』の結果、判定値※が1.0未満であるもの。または、申請者が実施する『容易な耐震診断』の結果、倒壊の危険性があると判断されたもの。 4.建設リサイクル法(平成12年法律第104号)に基づき、適正な分別解体、再資源化等を実施するもの。 ※判定値:震度6強から震度7クラスの大規模な地震に対する倒壊の可能性を数値化したものです。 1.5以上:倒壊しない 1.0以上1.5未満:一応倒壊しない 0.7以上1.0未満:倒壊する可能性がある 0.7未満:倒壊する可能性が高い |
| 補助金額概要 | 補助対象工事に要する経費の23%(上限20万円) |
| 定員 | 有り |
| 業者指定 | 無し |
| 問い合わせ先 | 住宅政策課 対策グループ |
一宮市ブロック塀等撤去費補助金
| 事業・条令名 | 一宮市ブロック塀等撤去費補助金 |
|---|---|
| 制度の概要 | 地震に伴うブロック塀等の倒壊による、人的被害や避難時の通行障害を防止するため、道路に面したブロック塀等の撤去を行う所有者に対し補助金を交付しています。 |
| 対象建築物の概要 | 次の条件を全て満たすものが対象となります。 1.市内にあるブロック塀等(コンクリートブロック・レンガ・石材等の組積造の塀)であること 2.ブロック塀等が道路に面するものであること 3.道路からの高さが1m以上のブロック塀等であること 4.道路面より上部のブロック、石等をすべて撤去すること※ ※ブロックを数段残す撤去工事は補助対象外となります。 ※撤去するブロック塀等が接面している道路が狭い(幅員4m未満)場合は、基礎の撤去が補助要件となる場合があります。 |
| 補助金額概要 | 1.ブロック塀等の撤去および処分に係る工事費 2.撤去するブロック塀等の延長に1mあたり1万円を乗じて得た額 上記(1)、(2)の少ないほうの額の1/2以内(1,000円未満の端数切捨て)で、上限は10万円 |
| 定員 | 無し |
| 業者指定 | 無し |
| 問い合わせ先 | 建築指導課 建築安全推進グループ |
民間既存建築物吹付けアスベスト対策補助事業
| 事業・条令名 | 民間既存建築物吹付けアスベスト対策補助事業 |
|---|---|
| 制度の概要 | 一宮市では、市内の既存建築物に吹付けられたアスベストの飛散による市民の健康被害を予防し、生活環境の保全を図るため、建築物に吹付けられているアスベストの分析調査・除去等をおこなう方に対し、費用の一部を補助します。 【補助制度について】 建築基準法においては、建築物の通常の使用状態において飛散のおそれのある建築材料として、「吹付けアスベスト」及び「アスベスト含有吹付けロックウール」(以下「吹付けアスベスト等」という。)を定め、規制対象としています。従って、増改築時等に際しても、工事が行われない部分について除去等の措置が義務付けられています。 当該補助制度は、「吹付けアスベスト等」の除去等の対策を推進するための制度です。 |
| 対象建築物の概要 | 一宮市内にある民間建築物で、以下の場合に費用の一部を補助します。 【分析調査】 屋内外に露出している吹付け建材で、「吹付けアスベスト等」が施工されているおそれがあるものの分析調査をする場合 【除去等】 屋内外に露出して「吹付けアスベスト等」が施工されているものを「除去・囲い込み・封じ込め」する場合 |
| 補助金額概要 | 《分析調査》 【対象経費】 補助対象建築物について分析調査に要する経費 【補助金額】 対象経費の全額 ただし、上限25万円(1,000円未満は切捨て) 《除去等》 【対象経費】 補助対象建築物について除去等に要する経費 【補助金額】 対象経費の2/3以内の額 ただし、上限180万円(1,000円未満は切捨て) |
| 定員 | 有り |
| 業者指定 | 無し |
| 問い合わせ先 | 建築指導課 建築安全推進グループ |
補助金を利用する際は、工事契約・着工前に必ず交付申請を行うことが大前提です。申請前に契約してしまうと対象外となるケースがあります。
補助を受けるためには申請前に工事契約を行わないなどの条件があるため、事前に詳細を確認しておくことが大切です。
一宮市の解体費用相場はいくら?
解体工事の費用は、建物の構造や大きさ、立地条件、残置物の有無などによって大きく変動します。
一宮市は都市部に近く、住宅密集地から郊外エリアまで幅広く存在するため、エリアによって価格差が出やすい傾向にあります。
建物の構造別にみた費用目安
解体費用は建物の構造によって大きく異なります。
構造が頑丈なほど工事に重機や人手が必要になり、費用が高くなる傾向があります。
一宮市を含む愛知県内の相場をもとに、以下に代表的な構造別の坪単価と、30坪解体時の費用目安を整理しました。
建物構造別の解体費用相場(愛知県)
| 建物構造 | 坪単価の目安(円) | 30坪の場合の費用例(円) |
|---|---|---|
| 木造 | 30,000~40,000 | 約900,000~1,200,000 |
| 鉄骨造 | 40,000~60,000 | 約1,200,000~1,800,000 |
| RC造 | 60,000~80,000 | 約1,800,000~2,400,000 |
さらに、木造住宅では延床面積が広くなるにつれて坪単価が下がる傾向もあります。以下に延床面積別の木造解体坪単価の目安も掲載します。
木造住宅:延床面積別の解体坪単価目安
| 坪数 | 坪単価の目安(円) |
|---|---|
| 10坪未満 | 約60,000 |
| 10〜19坪 | 約62,000 |
| 20〜29坪 | 約55,000 |
| 30〜39坪 | 約49,000 |
| 40〜49坪 | 約48,000 |
| 50〜59坪 | 約46,000 |
| 60〜69坪 | 約44,000 |
| 70坪以上 | 約39,000 |
なお、これらはあくまで目安であり、現地調査や建物の状態によって実際の費用は変わるため、見積もりを複数取ることが大切です。
費用が高くなる・安くなるケース
解体工事は一律ではなく、現場の条件や準備状況によって費用が上下します。一宮市のように住宅密集地と郊外が混在するエリアでは、立地や搬出条件によるコスト差が特に大きくなりやすいです。
以下に「費用が高くなるケース」と「費用を抑えられるケース」を整理しました。
解体費用が高くなる主なケース
| 条件・要因 | 内容 |
|---|---|
| 重機が入りにくい立地 | 狭小地・旗竿地などは手作業が多くなり費用増。 |
| 残置物が大量にある住宅 | 家財・ゴミ・家電などの廃棄費用が追加。 |
| アスベスト含有建材 | 調査・除去・処分に専門業者が必要で高額。 |
| 隣家が近く仮設が必要 | 養生足場・防音壁の設置などが求められる。 |
| 地中に構造物がある | 古い基礎・浄化槽・井戸・埋設物などが追加費用に。 |
解体費用が安くなる主なケース
| 条件・要因 | 内容 |
|---|---|
| 残置物を事前に片付け済み | 廃棄費用がかからずコスト削減。 |
| 前面道路が広くアクセス良好 | 重機・トラックがスムーズに出入りでき効率化。 |
| 延床面積が広めの建物 | 坪単価が下がりやすい傾向にある。 |
| 地元密着型の業者を選定 | 不要な中間マージンが省け、適正価格で施工可能。 |
現地調査を依頼してから詳細な費用の内訳を把握し、条件を整えておくことで無駄な出費を抑えることができます。
解体工事価格は上昇傾向
木造住宅の解体費用は、ここ数年で全国的に上昇しています。
下記グラフでは、各年度の平均的な傾向をもとに算出した概算値を示しており、実際の費用は、建物の構造・立地・工事条件などによって大きく変動するため、あくまで目安として参考にしてください。
解体工事をご検討の方は、早めに見積もりを取ることをおすすめいたします。
概算シミュレーター
該当市区町村を選択すると、補助金を含めたおおよその解体工事費用が分かります。
このシミュレーターは、あくまで目安を知るためのツールです。
実際の費用は建物の構造や立地条件などによって変わるため、正確な金額を知りたい方は見積もりを依頼するのがおすすめです。
解体費用を抑えるポイント
一宮市で空き家を解体する際、少しの工夫や準備で費用を抑えることが可能です。
この章では、特に重要な次の2つの観点から、解体費用を節約するための具体策を紹介します。
相見積もりの重要性
解体費用を適正価格で抑えるためには、複数社から相見積もりを取ることが不可欠です。
一宮市のように業者が多数存在する地域では、同じ建物でも見積もり金額に10万円〜50万円以上の差が出ることも珍しくありません。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 相場が分かる | 適正な価格帯を把握でき、法外な見積もりを避けられる。 |
| 内訳を比較できる | 不明瞭な項目や過剰な費用を見抜ける。 |
| 業者の対応が見える | 現地調査・説明の丁寧さなど、信頼性が判断できる。 |
| 補助金対応の有無が分かる | 市の補助制度に詳しい業者かどうか確認できる。 |
電話や写真だけで出す「概算見積もり」ではなく、必ず現地調査を受けたうえでの「正式見積もり」を比較するようにしましょう。
業者選びの注意点
費用を抑えるだけでなく、安心・安全な解体工事を実現するには業者選びが非常に重要です。
一宮市には解体業者が多数ありますが、中には無許可営業や不十分な説明でトラブルになる例もあります。
業者選びのチェックポイント
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| 建設業許可・解体工事業登録の有無 | 法的に適切な許認可を取得しているか確認。 |
| 現地調査の実施と説明内容 | 建物の状態や立地条件を正確に調査し、丁寧に説明してくれるか。 |
| 見積書の内訳の明確さ | 工事内容ごとの費用が細かく記載されているか。 |
| 補助金制度への理解と対応 | 一宮市の補助金利用に詳しく、申請のサポートができるか。 |
| 近隣対応の丁寧さ | 挨拶・説明・騒音・ホコリへの配慮があるか。 |
| 実績・口コミの確認 | 地元での施工経験や評判があるか調べる。 |
契約を急かす、見積もりが極端に安すぎる、工事内容の説明が曖昧な業者は要注意です。
まとめ:空き家対策と補助金で解体を前向きに
一宮市では空き家の数が16,800戸を超えており、今後も高齢化や相続問題を背景に増加が予想されます。放置された空き家は、老朽化による倒壊リスクや火災・防犯上の問題を引き起こす可能性があるため、早期の対応が求められます。
市では「老朽空き家解体工事費補助金」や「木造住宅解体工事費補助金」などの支援制度を整備しており、条件を満たせば最大20万円前後の補助を受けることができます。これにより、所有者の負担を軽減しつつ、地域の安全性や景観を守ることが可能です。
また、解体費用を賢く抑えるには、複数の業者からの相見積もりと、信頼できる業者の選定が鍵となります。補助金制度にも対応できる業者であれば、申請の手続きもスムーズに進みます。
空き家問題に悩む前に、ぜひ一歩踏み出して、資産と地域の未来を守る選択を考えてみてください。
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