摂津市は大阪市へのアクセスも良く、近年、使われなくなった住宅、いわゆる「空き家」が増加傾向にあります。
古い木造住宅の老朽化、相続後の放置、生活様式の変化などが背景にあり、防災・防犯・景観といった観点で問題が顕在化しています。
本記事では、摂津市における空き家の現状、解体費用の目安、補助制度、解体検討時の注意点などを、空き家所有者に向けてわかりやすく解説します。
摂津市は今「空き家」が増えている?
摂津市では、地域の住環境の維持や安全性確保のため、空き家対策を重要な課題として捉えています。近年、国の「空き家等対策の推進に関する特別措置法」(以下「空家法」)の改正を受けて、摂津市空家等対策計画を策定・更新しており、空き家の把握および適正管理の体制強化を進めています。
なぜ空き家が増えているのか
以下の表に、摂津市における空き家の増加要因を整理しています。
| 主な要因 | 概要 |
|---|---|
| 住宅ストックの古さ | 昭和〜平成初期に建てられた木造住宅が多く、経年による老朽化が進んでいる |
| 相続・住み替え後の放置 | 相続人が遠方に住んでいたり、維持管理が困難で放置されやすい |
| ライフスタイルの変化 | マンション志向や通勤利便性の優先などで、戸建ての需要が減少 |
| 法律・制度の認知不足 | 空き家対策制度を知らず、解体や管理を後回しにするケース |
使われなくなった住宅がそのまま放置されるケースが重なり、結果として空き家の増加につながっていると考えられます。
最新の空き家率データ
摂津市における空き家の実態は、総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によって次のように報告されています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 空き家率 | 11.39% |
| 空き家数 | 5,280戸 |
| 放置空き家率 | 3.73% |
| 放置空き家数 | 1,730戸 |
| 住宅総数 | 46,360戸 |
空き家率そのものは大阪府全体(16.12%)よりも低い水準にありますが、放置された空き家が約1,700戸あることは看過できない問題です。今後の老朽化進行や相続放棄に伴って、管理困難な空き家がさらに増加することが懸念されます。
摂津市の空き家対策・補助制度
摂津市では、空き家の適正管理や解体(除却)を促すため、以下のような制度・支援策を整備しています。
大阪府 摂津市 の補助金情報
摂津市木造住宅耐震改修補助金(除却関連)
| 事業・条令名 | 摂津市木造住宅耐震改修補助金(除却関連) |
|---|---|
| 制度の概要 | 住宅の耐震改修を促進し、地震による人的・物的な被害の軽減を図ることを目的としています。 (注意)工事着工後の申請はできませんので、必ず先に申請をしてください。 |
| 対象申請者 | ・補助対象建築物を所有する個人 ・年間の課税所得金額(世帯全員の課税所得金額の合計)が507万円未満 ・除却工事については、資産の額(預貯金、有価証券)が1,000万円以下の者 |
| 対象建築物の概要 | ・補助対象建築物は、以下の(1)~(4)すべてに該当する建築物です。 1.原則として、法の規定に適合し、昭和56年5月31日以前に法第6条第1項の規定による建築主事の確認を受けて建築された木造住宅。 ※昭和56年6月1日以降に増築、または木造と鉄骨造等で出来ている建物については補助対象外 2.所有者が現に居住又はこれから居住しようとするもの。 3.除却工事にあっては、所有者が現に居住若しくは使用している、又はこれから居住若しくは使用しようとするもの。 4.耐震診断の結果、総合評価における上部構造評点が数値1.0未満であること。 ※ただし、除却工事を申請する場合は、簡易診断法(『誰でもできるわが家の耐震診断』)にて補助申請ができます。 |
| 補助金額概要 | 除却工事費用:費用の10割。40万円を限度とする。 ただし、長屋又は共同住宅にあっては、1戸あたり40万円として算出した額とし、上限を80万円とする。 ※補助の対象になるのは、構造耐力上必要な工事の部分です。 ※次のような工事は、対象となりませんので注意してください。増築工事、リフォーム工事、設備の老朽化に伴う取替え、防腐防蟻処理など ※除却工事とは、建設業者が行う工事で耐震性が不足すると市長が認める木造住宅の全部を除却する工事をいいます。 |
| 定員 | 有り |
| 業者指定 | 無し |
| 問い合わせ先 | 建設部 建築課 |
摂津市ブロック塀等撤去工事費補助金
| 事業・条令名 | 摂津市ブロック塀等撤去工事費補助金 |
|---|---|
| 制度の概要 | 摂津市では、平成30年6月18日発生の大阪府北部を震源とする地震によるブロック塀等の倒壊被害を受け、ブロック塀などの倒壊による災害を未然に防止し、安心・安全に道路や公園を通行・利用していただくため、ブロック塀などの撤去に要する費用について、補助する制度を創設しました。 ※ブロック塀等撤去工事費補助金は令和7年度で終了します ・工事着工後の申請はできませんので、必ず先に申請を行ってください。 ・令和8年3月13日までに工事を終えて、完了報告を行っていただく必要があります。 ・予算額に達した場合は、受付を早期に終了することがあります。 ・まずは建築課居住支援係まで、お問い合わせください。 |
| 対象事業・工事の概要 | ブロック塀等をすべて撤去する工事 ※塀の高さを低くするだけの場合や、原則、基礎を含めすべて撤去しない場合は補助の対象になりません。 |
| 対象申請者 | 次のいずれにも該当する者 ・ブロック塀等の所有者で、撤去工事を施工業者が行うもの ・市税を滞納していないこと ・国、府又は市等の公共用地の取得に伴う損失補償を受けていないこと |
| 対象建築物の概要 | 次のすべてに該当する塀を対象とします。 ※必ず、補助対象となるか、事前に建築課居住支援係までご相談ください。 1.コンクリートブロック、れんが、石材、土で作られている。 2.公道(私道を除く)または公園に面して設置されている。 3.道路からの高さが80センチ以上。 ※公道:国、府または市が管理する道路(道路法または法定外公共物の管理に関する条例の道路) ※公園:市が管理する公園(ちびっこ広場を含む)、緑道 ※ブロック塀等・・・コンクリートブロック塀、コンクリート万年塀、石塀、レンガ塀などの塀・門柱等 ※隣地境界の塀など、道路や公園に面していない塀は対象外です。 ※造成工事や建物解体除却に伴う撤去工事は対象外です。 |
| 補助金額概要 | 施工業者が実施した工事に要した額または、道路等に面したブロック塀等の面積に1平方メートル当たり10,000円とした額のいずれか低い額(1,000円未満の端数があればこれを切り捨てた額)を予算の範囲内で交付し、限度は200,000円とする。 |
| 定員 | 有り |
| 業者指定 | 撤去工事を施工業者が行うもの |
| 問い合わせ先 | 建設部 建築課 |
解体・活用を検討する人向けチェックリスト
以下の項目に該当する場合は、摂津市の補助制度や対策事業を活用できる可能性があります。
解体・除却・利活用などを検討している方は、事前確認にご活用ください。
| チェック項目 | 該当の有無 |
|---|---|
| 建物が昭和56年5月31日以前に建てられた木造住宅である | □ はい / □ いいえ |
| 建物が著しく老朽化しており、耐震性に不安がある | □ はい / □ いいえ |
| 解体(除却)を検討しているが、費用面が不安である | □ はい / □ いいえ |
| 市の耐震診断や除却補助制度を知って活用したい | □ はい / □ いいえ |
| 建物の外構(ブロック塀など)に倒壊リスクがある | □ はい / □ いいえ |
| 自分では制度の手続きが難しいため、専門家に相談したい | □ はい / □ いいえ |
3項目以上該当する方は、摂津市建築課への相談をおすすめします。
なお、すべての補助制度は「工事前の申請」が条件です。
「気づいたときには対象外だった」とならないよう、早めの準備が重要です。
摂津市の解体費用相場はいくら?
摂津市で空き家を解体する際、最も気になるのが費用の目安です。
解体工事の費用は、建物の構造や規模、立地条件などによって変動しますが、ここでは大阪府全体の平均相場を基に、一般的な30坪(約99㎡)の住宅を例に費用感を紹介します。
建物の構造別にみた費用目安
摂津市での解体工事は、大阪府全体の相場に準じた費用感が想定されます。
ここでは30坪(約99㎡)の住宅を基準に、建物構造ごとの解体費用の目安を整理しました。
| 建物構造 | 坪単価の目安 | 30坪の解体費用概算 |
|---|---|---|
| 木造 | 約5.7万円/坪 | 約171万円 |
| 鉄骨造(S造) | 約7.2万円/坪 | 約216万円 |
| 鉄筋コンクリート造(RC造) | 約7.7万円/坪 | 約231万円 |
木造住宅は最もコストを抑えやすく、工期も比較的短く済む傾向があります。
一方、鉄骨造やRC造は強度が高いため、重機や人件費の負担が増える分、解体費用も高めになります。
なお、上記はあくまで建物本体の解体費用のみであり、以下のような追加費用が別途発生することがあります。
- 家財・ごみなどの残置物撤去費
- 整地・造成工事費
- 建物滅失登記などの申請代行費
費用が高くなる・安くなるケース
解体費用は建物構造や広さだけでなく、立地条件や残置物の有無などによって大きく変動します。以下に、費用に影響を与える主な要因をまとめました。
| 要因カテゴリ | 費用が高くなるケース | 費用が抑えられるケース |
|---|---|---|
| 接道・立地条件 | 前面道路が狭く重機が入らない/住宅密集地 | 大型車が出入りしやすい広い前面道路がある |
| 建物の状態 | アスベスト使用/老朽化が激しく手作業が必要 | 構造が単純で機械作業が中心で済む |
| 敷地状況 | 地下室・擁壁・庭木・井戸などがある | 平坦で障害物がないシンプルな敷地 |
| 残置物の量 | 家具・家電・生活ごみが大量に残っている | 事前に片付けが済んでいる状態 |
| その他工事の有無 | 外構・塀・車庫・庭石など付帯物の撤去が必要 | 建物本体のみの解体で済む |
摂津市には住宅密集エリアや古い街区も多く、立地や敷地状況によって見積もり額に差が出やすいため、現地調査を通じた正確な費用確認が重要です。
解体工事価格は上昇傾向
木造住宅の解体費用は、ここ数年で全国的に上昇しています。
下記グラフでは、各年度の平均的な傾向をもとに算出した概算値を示しており、実際の費用は、建物の構造・立地・工事条件などによって大きく変動するため、あくまで目安として参考にしてください。
解体工事をご検討の方は、早めに見積もりを取ることをおすすめいたします。
概算シミュレーター
該当市区町村を選択すると、補助金を含めたおおよその解体工事費用が分かります。
このシミュレーターは、あくまで目安を知るためのツールです。
実際の費用は建物の構造や立地条件などによって変わるため、正確な金額を知りたい方は見積もりを依頼するのがおすすめです。
解体費用を抑えるポイント
解体費用は条件次第で大きく変動するため、費用をなるべく抑えたいと考えるのは自然なことです。
摂津市でも、同じ30坪の住宅であっても、業者の選び方や契約の進め方次第で数十万円単位の差が出るケースがあります。
ここでは、無理のないコストで解体工事を進めるための基本的なポイントを2つご紹介します。
相見積もりの重要性
解体費用を抑えるうえで最も効果的なのが、複数の業者から見積もりを取る「相見積もり」です。価格だけでなく、工事内容や対応の質も比較することで、適正価格と信頼できる業者を見極めることができます。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 適正価格がわかる | 複数の見積もりを比較することで、相場より高すぎる・安すぎる業者を判断できる |
| 工事内容を比較できる | 各社で含まれる作業や範囲が異なるため、詳細を確認することで安心感につながる |
| 説明力・対応力の確認 | 現地調査や質問対応で、業者の誠実さや説明のわかりやすさをチェックできる |
| 値下げ交渉の材料になる | 他社の見積もりを根拠に、価格の交渉がしやすくなる |
摂津市内には大小さまざまな解体業者があるため、最低でも2~3社に相見積もりを依頼し、納得できる条件で契約することが重要です。
業者選びの注意点
解体工事では、費用だけでなく、近隣への配慮や安全性、法令遵守なども重要な判断材料です。
トラブルを避け、安心して工事を任せるためには、業者選びの段階でしっかり確認しておくことが必要です。
| チェックポイント | 内容・確認のポイント |
|---|---|
| 許可の有無 | 建設業許可、解体工事業登録、産廃収集運搬業許可などを持っているか |
| 見積書の内容 | 明細が詳しく、「一式」表記ばかりでないか、工事範囲が明確か |
| 現地調査の対応 | 担当者が丁寧に現地を確認し、説明がわかりやすいか |
| 近隣対応への姿勢 | 工事前のあいさつ回り、騒音・振動対策の説明があるか |
| 実績と口コミ | 地元での施工実績があるか、評判や紹介実績があるか |
摂津市は住宅密集地も多いため、特に近隣トラブルを防げる業者かどうかを見極めることが大切です。
まとめ:空き家対策と補助金で解体を前向きに
摂津市では、空き家率は11.39%と大阪府平均よりは低いものの、放置空き家が1,730戸と決して少なくありません。こうした空き家を放置すれば、老朽化による倒壊リスクや治安・景観への悪影響が生じる可能性があります。
市では、老朽危険空家の除却に対する補助制度や、耐震診断・改修への支援、ブロック塀の撤去補助など、多角的な対策を講じています。
これらはすべて事前申請が必須であり、活用には早めの行動が重要です。
また、解体費用は条件によって大きく変動するため、相見積もりの取得と信頼できる業者選びが費用を抑えるカギとなります。補助制度と併せて活用することで、経済的な負担を軽減しつつ、空き家問題に前向きに取り組むことが可能です。
空き家は放置せず、地域と自分の暮らしを守る第一歩として、早めに対策を始めましょう。
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