構造部分以外を解体していくスケルトン解体工事は、内装を含めたリフォームを検討している場合にもメリットがあります。しかし、「スケルトン解体にはどの程度費用を負担するのかイメージできない」と感じている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、スケルトン解体工事の特徴や解体費用の目安、メリット・デメリットに詳しくご紹介していきます。マンションの空室率を改善するために内装や壁のリフォームを検討している方や内装解体では不十分と考えている方などは、ぜひ参考にしてみてください。
マンションのスケルトン解体とは
一般的には解体工事は、建物や埋設物を含めて解体および撤去していきます。対して、スケルトン解体は、建物を残すことができます。
まずは、スケルトン解体の基本について確認していきましょう。
構造部分を残した解体工事
スケルトン解体とは、建物の構造部分を残した解体工事のことで、内装解体に含まれます。構造部分(躯体)は、基礎や土台、柱や梁、外壁、床、筋交いなどといった部分を指します。
マンションのスケルトン解体は、コンクリート打ちっぱなしの状態にすることがほとんどです。
具体的には、配線や配管、壁、床、天井、給排水機、吸排気設備などを撤去し、骨組みや構造部のみ残ります。なお、内装を入居時の状態に戻す工事は、原状回復や原状復帰と呼びます。
解体業者によってスケルトン解体と原状回復工事の定義が異なるため、契約前に工事範囲やスケルトン解体の流れを確認するのが大切です。
スケルトン解体の特徴や具体的な内容については以下の記事を参考にしてください。
※内部リンク「スケルトン工事とはなに?」
スケルトン解体は入居者やオーナーが検討できる
マンションのオーナーは、スケルトン解体やリフォームなどを検討および実行できます。
また、入居者も管理組合の承認を得たり工事可能な状況であったりすれば、自室のみスケルトン解体を依頼することが可能です。ただし、壁式工法は柱や梁が少ないため、スケルトン解体およびリフォームの難しい構造です。
マンションのスケルトン解体費用
スケルトン解体について理解できたあとは、マンションのスケルトン解体費用について確認しましょう。
スケルトン解体の費用は、さまざまな工事の中でも比較的シンプルな費用計算で、なおかつリーズナブルな傾向です。
リフォームの予算を残したい方などは、スケルトン解体費用について把握しておくのも大切です。
坪数と坪単価で計算される
マンションにかぎらずスケルトン解体の費用は、「坪数×坪単価」で求められています。また、解体費用に加えて処分費用や事務処理費用などがかかります。
坪数や坪単価の意味は以下の通りです。
- 坪数:1坪2畳、1坪あたり約3.3㎡
- 坪単価:1坪当たりの解体費用
たとえば、坪数20坪で坪単価2万円の場合は、40万円程度のスケルトン解体費用として計算されます。スケルトン解体の坪単価は、解体業者によっても異なるものの、1坪1万5,000円~4万円台で定められている傾向です。
一方、坪数が増えるほど坪単価を抑えてもらえる傾向もあるため、必ずしも延床面積に応じて費用設定される訳ではありません。
なお、建物全体の解体と比較すると、1坪あたり2~4万円程度解体費用を安く抑えることが可能です。
スケルトン解体の見積もりを比較する際は、解体費用の基準となる坪単価にも注目です。
建物の種類などによってもスケルトン解体費用は変わる
スケルトン解体費用は、建物の種類によっても変わります。
マンションの場合は、1坪あたり1坪1万5,000円~4万円台で定められている場合が多いようです。
一方、アパートは1万3,000円~4万円弱、戸建て住宅はマンションと大きく変わらない傾向です。
その他費用に影響するポイントとしては、以下の通りです。
- 立地条件
- 建物の構造
- 建物が建てられている場所
- アスベストの有無
解体業者からマンションのスケルトン解体費用見積もりを提示された際は、どのようなポイントで単価を定めたのか質問してみるのも大切です。
スケルトン解体費用の内訳
スケルトン解体の費用には、撤去と養生、廃材処分といった費用項目があります。
- 解体費用:坪数×坪単価で求められる
続いては、スケルトン解体費用の内訳について確認していきましょう。
撤去費用
撤去費用とは、いわゆる人件費のことです。撤去費用は、作業員や作業日数が増えるほど高い傾向です。
撤去費用の計算は、作業員×作業日数×坪単価で求められます。
解体業者のHPでは、スケルトン解体の撤去費用について記載していません。そのため、問い合わせ前に撤去費用の目安を確認することは、難しい状況です。
撤去費用を確認したい場合は、まず見積もりの作成を依頼し、費用項目から確認の必要があります。
養生費用
養生費用は、文字通り工事現場の養生にかかる費用を指しています。
養生シートは、壁や床など各部材の保護を行うことができるシートです。解体工事現場では、床や壁、工事現場全体を養生シートで取り囲みます。
養生を行うことで、部材に傷がつかないようにするのはもちろん、ほこりやチリの飛散防止、騒音の軽減といった対策につながります。
なお、養生費用は坪単価に含まれないため、解体費用と別に計算されています。養生シート1枚あたりの面積を基準として養生費用が、見積もりに含まれます。
たとえば、養生シート1㎡につき800円の場合、30坪で15万円程度の費用がかかります。
廃材処分費用
廃材処分費用は、内装の解体に伴い発生した金属や木材、がれきなどの処分にかかる費用全般を指します。
解体工事で発生した廃棄物は、産業廃棄物として扱われるため、中間処理場への運搬と処理コストもかかります。一般的に産業廃棄物の処理費用は、解体費用の40%を占めるほど比較的大きなコストです。しかし、法律で定められた処理方法のため、省略することはできません。
極端に坪単価が安い場合、産業廃棄物の処理方法に問題のある業者という可能性もあります。解体業者を比較する時は、口コミや実績などを確認するのも大切です。
その他費用
スケルトン解体では、マンションの照明などや配線なども撤去します。このような解体工事に伴う作業を付帯工事と呼び、解体費用に含まれます。
他には、解体工事の際に作成した書類などの事務費用など、諸々費用がかかります。さらに不動産会社など仲介会社が入っている場合は、中間マージンも発生します。
解体費用を少しでも抑えるには、中間業者の入らない方法でスケルトン解体を依頼する必要があります。
後半では、スケルトン解体の依頼方法についても解説します。
マンションのスケルトン解体とリフォームを行った場合の費用
マンションのスケルトン解体に加えてリフォーム工事も行う場合は、400万円以上の費用がかかります。
30坪のスケルトン解体では、解体費用で約100万円です。さらに補強工事や照明や配線などの設置、内装などを含めると設備価格と設備設置費用などで300万円以上かかります。
スケルトン解体のみであれば、解体工事よりも費用を安く抑えられます。リフォームを前提としている場合は、内装工事や設備費用の負担に注意が必要です。
マンションのスケルトン解体を行うメリット
スケルトン解体の概要やマンションの解体費用を確認したあとは、スケルトン解体のメリットについて確認しましょう。
スケルトン解体には、費用やリフォームに関するメリットがあります。
一般的な解体工事よりも費用が安い
マンションのスケルトン解体費用は、建物全体を解体していく工事と比較して、安く抑えられるというメリットも存在します。
スケルトン解体は構造部分を残しているため、その分解体作業や日数を省略できます。また、産業廃棄物を抑えられるため、廃棄物処理費用の負担も軽減することが可能です。
坪単価で比較した場合、スケルトン解体1万5,000円~4万円、通常の解体5万円~8万円と2倍以上異なるケースもあります。
このようにスケルトン解体は、コストを抑えながら内装や壁、床材などを撤去できるのが強みです。
新規で内装工事を進められる
スケルトン解体は構造部分以外を撤去するため、マンションの中に店舗や事務所用の内装設備を導入したり間取りを柔軟に変更したりできます。
スケルトン解体は、内装解体と異なり壁や床材、照明、その他内装設備を撤去しています。そのため、新たに間取りや用途を考えることが可能です。
たとえば、マンションオーナーの場合は、1階部分へコンビニを導入するなどといった計画も立てることができます。入居者の場合は、自室のみスケルトン解体を依頼し、住みやすい間取りへリフォームできます。
マンションオーナーや入居者どちらにとってもスケルトン解体は、メリットのある解体方法です。
建物の状況を確認および改善できる
スケルトン解体は、マンションの柱や梁などの状態を把握できるメリットも得られます。
マンションの構造部分は、外から細かく確認することは難しい状況です。スケルトン解体を行うと、構造部分の腐食や劣化などについて簡単に把握できます。また、スケルトン解体後に補強や耐震工事、断熱工事などといった、各工事の検討を速やかに始められます。
リフォームだけでなく補強工事も検討しているマンションオーナーには、利用機会のある解体方法です。
スケルトン解体後に売却した方がいい場合もある
築年数20年以上経過しているマンションや住みにくい間取りなどの場合は、スケルトン解体を行った方が販売しやすいケースもあります。
買い手の中には、内装解体費用を抑えながら自身でリフォームやリノベーションを施した上で、マンション経営を始めたいという方も存在します。このような方にとってスケルトン解体が行われたマンションは、購入しやすい物件です。
マンションの買い手がつかない場合は、スケルトン解体も検討してみてはいかがでしょうか。
マンションのスケルトン解体を行うデメリット
一方でマンションのスケルトン解体には、いくつかのデメリットも存在します。これからリフォームを検討している方は、スケルトン解体のメリットとデメリットも理解した上で判断するのが大切です。
続いて、マンションのスケルトン解体に関するデメリットを確認しましょう。
スケルトン解体のみでは外壁など外見上の変化を期待できない
スケルトン解体では、外壁や建物の構造そのものを変化させることはできません。スケルトン解体は、一般的な解体工事と異なり構造を活かしながらリフォームや原状回復、補強工事を行うことが可能な一方、構造を残す工事です。
たとえば、マンションの共用部分や階段の位置など、各フロアの間取りを大幅に変更するには、スケルトン解体で対応できない可能性があります。
柱や梁の位置を変更しなければいけない場合や外壁など外見上の変化を期待している時は、別の解体方法を検討した方がいい場合もあります。
構造部分は引き続き使用する必要がある
スケルトン解体を選択した場合は、マンションの構造が劣化していても引き続き使用し付けなければいけません。スケルトン解体は、あくまで内装設備や壁、床材などの解体を目的とした工事です。
マンションの構造部分が腐食していたり破損していたりしている時は、スケルトン解体で対処できないケースもあります。
マンションの構造そのものに課題を抱えている時は、建物の解体と立て直しを含めた計画を考えるのが大切です。
想定外の補修費用が発生する可能性
スケルトン解体を行う際は、想定外の補修や補強費用の発生についても備えておくのも大切です。
スケルトン解体によってあらゆる構造部分が目に見えるようになる半面、柱や梁などの腐食や破損など、さまざまな問題点をまとめて確認することになります。そのため、複数個所の補強工事や補修作業、その他工事を行わなければいけない可能性があります。
スケルトン解体費用だけでなく、補強工事などのも費用も考えておくのが重要です。
マンションのスケルトン解体費用を抑えるポイント
マンションのスケルトン解体費用は、一般的な解体工事と比較すると安いものの、一定の費用負担がかかります。さらに依頼方法や依頼先によっては、割高な解体費用を請求される可能性もあるため注意が必要です。
ここからは、マンションのスケルトン解体費用を抑えるポイントについて確認していきましょう。
相見積もりのサービスで解体業者を比較
相見積もりサイトで解体業者を比較検討すると、スピーディかつ安い費用で解体工事を依頼することが可能です。
解体費用は、解体業者によって異なります。また、悪質な業者に依頼してしまうと、高額な解体費用を負担せざるを得ない可能性もあります。
しかし、実績が豊富で適正価格の工事を行う解体業者を探すには、手間と時間がかかります。さらに1社ずつ見積もりの依頼を行うと、見積もり内容の比較のみで膨大な時間を必要とします。
相見積もりサイトは、解体業者の選定から見積もり作成の依頼、サポートサービスまで含まれており、忙しい方や至急スケルトン解体を行いたい方にも利用しやすいサービスです。
解体業者へ直接依頼
マンションのスケルトン解体費用を抑えるには、仲介業者を挟んだ依頼を控えるのが大切です。
仲介業者へ依頼すると仲介料などが上乗せされる場合もあるため、結果的に高額な解体費用を負担しなければいけません。
不動産会社や知り合いなどから解体業者を紹介された場合でも、解体業者へ直接依頼するのが大切です。
なお、弊社の一括見積もりサービス「クラッソーネ」では、希望の解体業者へ直接依頼いただけます。全国約1300社以上の解体業者から希望の条件に合った業者へ一括見積もりを依頼し、解体業者の比較・「クラッソーネ」の専用ページより打ち合わせ・契約へ進むことが可能です。
残置物は処分しておく
スケルトン解体費用をなるべく抑えるには、あらかじめ残置物を処分しておくのが大切です。
解体業者は、内壁や床材だけでなく室内の家具や家電、日用など品といった残置物も処分しています。残置物は産業廃棄物扱いとなり、運搬や中間処理費用などに上乗せされるため、解体費用の負担増加につながってしまいます。
粗大ごみや家具家電を自力で処分可能な方や解体費用を抑えたい方は、解体工事前に自身で残置物を処分しておくのが大切です。
マンションのスケルトン解体に関する注意点
マンションのスケルトン解体を依頼する際は、費用以外のポイントも確認するのが大切です。スケルトン解体に限らず、工事担当者へ要望を伝えたり工事内容について説明を受けたりなど、何度も丁寧に打ち合わせを重ねるのは、トラブル防止という点で重要です。
続いては、マンションのスケルトン解体における注意点を確認します。
解体業者との打ち合わせは綿密に行う
解体個所や作業の流れに関する認識のずれが発生しよう、どこを残してどこを撤去するのか解体業者と丁寧に打ち合わせを重ねるのが大切です。
マンション居住者がスケルトン解体を検討している時は、解体業者との打ち合わせはもちろん、マンションのオーナーとも丁寧に打ち合わせを重ねておきます。
解体業者と認識にずれが生じていると、残しておくべき部分まで解体・撤去されてしまう可能性があります。解体工事は、1度始めてしまうと元に戻すことができません。
着工後にトラブルが発生しないよう、見積もりの確認から解体作業の範囲、どこを残しておくべきか担当者と情報共有しておきましょう。
ライフラインの停止について解体業者と相談した上で実行
電気と水道、ガスは、スケルトン解体前に停止しておく必要があります。しかし、解体業者によっては、水道でホコリの飛散を抑えながら解体作業を進めるケースもあるため、いつどのように停止しておくべきか相談するのが大切です。
マンションにアスベストが含まれている場合は除去作業が必要
建材にアスベストが含まれている場合は、専門業者による除去作業が必要です。
2021年現在は、アスベストの使用や製造、販売などに関する規制がかけられています。しかし、アスベストに関する法律改正前に建てられたマンションの中には、アスベストが含まれているマンションも存在します。さらに除去作業が行われていないマンションもあるため、解体作業時に除去作業も行わなければいけません。
アスベストは、非常に細かい繊維で、肺に入りやすくなおかつ長期間とどまります。アスベストが原因で、悪性中皮腫や肺がんなどといった病気にかかるケースもあり、注意の必要な化学物質です。
専門業者や解体業者などによる事前調査でアスベストの含有が確認された場合は、除去作業の依頼を別途行う必要があります。
アスベストの除去費用や補助金については以下の記事を参考にしてください。
※内部リンク「アスベストの除去・撤去にかかる費用はいくら?」
近隣住民へ挨拶を丁寧に行う業者か確認
スケルトン解体を依頼する場合は、近隣住民への挨拶も丁寧に行っている解体業者から比較するのが大切です。実績のある解体業者は、工事前に近隣住民へ挨拶を行ったり工事に関するお詫びと実施期間、連絡先などを記載した紙を配布したりしています。
近隣住民にとって解体工事は、騒音などストレスの原因となる事象も含まれています。住民トラブルを避けるためにも、解体業者側から挨拶を行うのが基本です。
しかし、一部の業者は、挨拶などを行わずに解体作業を始めるケースもあり、後々トラブルに発展しかねません。
解体業者を比較検討する際は、独自の審査に通過した業者のみ登録されている一括見積もりサービスを利用したり口コミや評判を確認したりするのもおすすめです。
解体工事の騒音について気がかりな方は、以下の記事を参考にしてみてください。
※内部リンク「解体工事はどこまでが騒音(うるさい)扱い?トラブルを未然に防ごう」
マンションのスケルトンスケルトン解体費用は坪単価1万5,000円~4万円台
マンションのスケルトン解体にかかる費用は、坪単価で1万5,000円~4万円台です。しかし、解体工事の範囲や立地条件などで変動します。さらに不動産会社などの紹介では、仲介マージンを上乗せされる場合もあります。
スケルトンの解体費用を抑えるには、適正価格で見積もりを提示してもらえる業者へ直接依頼するのが大切です。
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