横浜市は人口規模・住宅数ともに県内最大級の都市であり、多様な住環境が広がる反面、空き家の問題も無視できない状況になっています。
使われなくなった住宅は、維持管理の負担、老朽化や災害リスク、近隣への影響など、所有者にとっても地域にとっても課題です。
本記事では、横浜市における空き家の現状、解体や活用の検討ポイント、そして制度や補助の有無について、空き家所有者の立場からわかりやすく整理します。
横浜市は今「空き家」が増えている?
大都市である横浜市においても、空き家の増加は年々進行しています。
人口規模の大きさゆえに住宅数も多く、必然的に空き家の絶対数も膨らみやすい傾向にあります。
とくに高齢化が進む地域や、古い住宅団地エリアでは、長年手つかずのまま放置されている空き家も珍しくありません。
最新の空き家率データ
横浜市は神奈川県内で最も人口・住宅数が多い都市であり、その分空き家の戸数も突出しています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 空き家率 | 8.68% |
| 空き家数(戸) | 168,600戸 |
| 放置空き家率 | 2.65% |
| 放置空き家数(戸) | 51,500戸 |
| 住宅総数(戸) | 1,942,700戸 |
特に注目すべきは放置空き家の多さで、市内全体で5万戸以上が適切な管理をされていないまま残っていると見られています。
この数は県内最多であり、今後さらに増加する可能性も高いと考えられています。
なぜ空き家が増えているのか
横浜市で空き家が増加している要因は、全国共通の社会的背景と、都市特有の事情の両面があります。以下の表に主な要因を整理しました。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 高齢化の進行 | 高齢世帯が施設へ転居、または死亡後に住宅が空き家化するケースが増加 |
| 相続による管理放棄 | 相続人が市外・県外に住んでおり、管理できないまま放置される住宅が多い |
| 住宅供給の過剰 | マンションや戸建ての新築供給が続く一方で、古い住宅が取り残される傾向 |
| 団地・古い住宅地の更新停滞 | 昭和期に造成された住宅地で建替えや転居が進まず、空き家が残存する |
特に、港南区や旭区などの郊外エリアでは、こうした事情から空き家が目立つようになっており、今後も管理が難しい住宅の増加が見込まれます。
横浜市の空き家対策・補助金制度
横浜市では、空き家の解体だけでなく「再利用」「地域活用」を視野に入れた多様な支援制度を整えています。
所有者や活用希望者が制度をうまく活用することで、空き家の有効活用や安全対策が可能です。
神奈川県 横浜市 の補助金情報
住宅除却補助制度
| 事業・条令名 | 住宅除却補助制度 |
|---|---|
| 制度の概要 | 横浜市住宅除却補助事業は、耐震性が不足する木造住宅等の解体工事費用を市が補助する制度です。 【令和7年度の制度創設・拡充について】 ・新耐震グレーゾーン住宅(昭和56年6月以降、平成12年5月末以前に着工された建築物)を補助対象に追加します。 ・旧耐震基準の除却工事の補助金上限額を一般世帯20万円・非課税世帯40万円から、一律50万円に増額します。 |
| 対象申請者 | 解体する建築物の所有者(法人を除く) |
| 対象建築物の概要 | 次の1,2の両方に該当する建築物 1.平成12年5月末日以前に新築の工事に着手した建築物 2.次の「耐震性のチェック」の手段いずれかで、耐震性のチェックを行い、耐震性が低い(倒壊の危険性がある)と判断された建築物 ※既に行った工事の補助申請はできません。 ※空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)を適用する場合でも、本除却補助制度を申請することが出来ます。 |
| 補助金額概要 | 補助金額は、1.~3.いずれか最も低い金額となります。 1.補助上限額 【旧耐震建築物(昭和56年5月末以前)】 50万円 【新耐震建築物(昭和56年6月以降平成12年5月末以前)】 一般世帯:20万円 非課税世帯:40万円 2.面積限度額(共通) 21,100円×延床面積(㎡)×1/3 3.工事費(共通) 補助対象工事費 ※非課税世帯とは、所有者及びそれらの世帯員全員の住民税(道府県民税、都民税、市町村税及び特別区民税)が過去2年間非課税の世帯のこと。 ※面積限度単価については、市が毎年度、情勢に応じて算出しています。 ※補助区分のどちらに当てはまるかは、次の資料を参考にしてご判断ください。 ・【参考】新築及び増築年次と面積における、補助区分について(PDF:335KB) ※補助対象工事費は、実際の見積書から、市が補助対象工事を算出します。補助対象工事の考え方は次の資料を参考にしてください。 ・【参考】補助対象工事費の考え方(PDF:577KB) |
| 定員 | 有り |
| 業者指定 | 除却工事を行うことができる事業者は、以下の要件を満たす必要があります。 ・市内事業者(市内に本社がある事業者) ・建設工事に係る資材の再生資源化等に関する法律第2条第12項又は建設業法別表第一の下欄に掲げる土木工事業、建築工事業又は解体工事業に係る同法第三条第一項の許可を受けた者 ※見積金額が100万円以上となる場合は、2者以上の見積書の提出が必要です。また、「補助金交付決定通知書」受領後、見積金額が低い方の事業者との契約となります。見積金額が高い方の事業者とは契約できませんのでご注意ください。 |
| 問い合わせ先 | 建築局建築防災課 耐震事業担当 |
建築物不燃化推進事業補助<エリア限定の解体・新築の補助金>
| 事業・条令名 | 建築物不燃化推進事業補助<エリア限定の解体・新築の補助金> |
|---|---|
| 制度の概要 | 【★重要★建築物不燃化推進事業補助の改正のお知らせについて(令和7年3月1日改正)】 令和7年3月1日に補助制度を改正しました。改正の概要は次のとおりです。 ・建築物の除却の補助申請対象者の追加 ・補助金の交付を受けた建築物の処分の制限の明確化 ・新たな建物所有者への通知 ・様式の変更(納税状況等調査同意書、中小企業者等申告書、宅地建物取引業に関する誓約書等) ・様式の追加(建築物除却行為承諾書) 【「燃えにくく、住みやすいまち」へ】 火災による被害が特に大きいと想定される地域(重点対策地域)等において、古い建築物を除却(解体)する場合や、燃えにくい建築物を建てる際に、除却工事費や新築に係る工事費(耐火性能強化相当額)の一部を補助します。 また、「重点対策地域(不燃化推進地域)」においては、不燃化推進条例に基づき、建物を建てる際、原則として、全ての建物を準耐火建築物以上とすることを義務付けています。 |
| 補助金額概要 | <老朽建物の解体> 【補助率】 重点対策地域(不燃化推進地域):3/4 上記以外の補助対象地区:2/3 【補助上限額】 いずれも150万円 ※延べ面積による上限金額があります。 |
| 定員 | 無し |
| 業者指定 | 無し |
| 問い合わせ先 | 都市整備局防災まちづくり推進室防災まちづくり推進課 |
横浜市ブロック塀等改善事業
| 事業・条令名 | 横浜市ブロック塀等改善事業 |
|---|---|
| 制度の概要 | 平成30年6月の大阪府北部における地震では、ブロック塀の倒壊が原因で人命に関わる被害が発生しました。このことを受け、横浜市では、地震発生時における歩行者への被害を防止する観点から、市内全域でコンクリートブロック塀等の改善工事費の一部を補助しています。 補助金交付申請の前に事前相談を行い、現地調査等の上、回答を受ける必要があります。事前相談の申し込みから回答までには2か月程度要しますので、補助金の申請をお考えの方はご注意ください。 |
| 対象申請者 | ブロック塀等の所有者又は管理者 |
| 対象建築物の概要 | 原則として、以下のア~ウ全てを満たしているもの ア.道路等(※1)に面していること イ.高さ1m以上のブロック塀等(※2)であること。 ウ.地震時に倒壊するおそれのあるもの。(※3) ※1「道路等」とは、道路法の道路、建築基準法第42条に規定する道路又は第43条第2項の規定にかかる空地、その他これらに類するもので市長が認めるもの ※2「ブロック塀等」とは、コンクリートブロック塀、コンクリート製の塀、石積塀、万年塀その他これらに類する塀 ※3事前相談を受けた後、市職員又は市が委託する専門家が現地を確認し判定。 |
| 補助金額概要 | 補助率・長さ等により補助額が決まります。(下表参照) 【ブロック塀等の除却工事】 補助対象となる工事費の9/10 又は 長さ×13,000円/mを乗じた額 のいずれか低い額 【軽量なフェンス等の新設工事】 補助対象となる工事費の1/2 又は 基礎を新設する場合長さに37,000円/mを乗じた額 既存基礎を使用する場合長さに18,000円/mを乗じた額 生垣を設置する場合長さに13,000円/mを乗じた額 のいずれか低い額 ※上記の除却工事を軽量なフェンス等の新設工事を合わせた上限額は塀の長さに応じて10m未満30万円10m~20m未満40万円20m以上50万円です。 |
| 定員 | 無し |
| 業者指定 | 無し |
| 問い合わせ先 | 建築局企画部建築防災課 |
横浜市民間建築物吹付けアスベスト対策事業
| 事業・条令名 | 横浜市民間建築物吹付けアスベスト対策事業 |
|---|---|
| 制度の概要 | 本事業は、多数の方が利用する民間建築物(店舗、事務所、駐車場等)に施工されている吹付けアスベストについて、無料の含有調査や、除去等工事に要する費用の補助を行う事業です。 |
| 対象事業・工事の概要 | 事業の対象となる対策工事の方法は、以下の2種類です。 1.除去工法 方法:吹付けアスベストを下地から取り除く工法 特徴:最も確実な対策です。 2.封じ込め工法 方法:吹付けアスベストに薬剤を含浸させ固定し、飛散を防止する工法 特徴:除去工法より安価ですが、一時的な対応であり、工事後も適切な維持管理が必要となります。また、建物の解体時には、解体に先立ちアスベストの除去工事が必要です。 ※既存の吹付けアスベストの状態によっては採用できない場合もあります。 ※囲い込み工事は対象外 |
| 対象建築物の概要 | 【多数の方が利用する民間建築物】 ・店舗、事務所、駐車場、工場、倉庫など ・共同住宅の場合は共用部分のみ(機械室なども対象に含みます。) 【次のものは除きます】 ・個人の住宅 ・除却を予定している建築物 ・吹付け建材以外の建材の調査及び除去等(屋根材に使われる形成板、外壁の仕上塗材等) ・アスベスト含有調査の場合で、過去に本事業によりアスベスト含有調査の補助等を受けた建築物と同一敷地内の建築物 ・アスベスト除去等の場合で、過去に本事業によりアスベスト除去等の補助等を受けた建築物と同一敷地内の建築物 ・アスベスト除去等又はアスベスト含有調査に関する他の補助を受けている建築物 ・建築基準法に違反している建築物 |
| 補助金額概要 | 【吹付けアスベスト含有調査】 市が委託している専門業者が訪問し、吹付け建材にアスベストが含まれているかどうかを無料で調査します。 【吹付けアスベスト除去等(工事に要する費用の補助)】 「吹付けアスベスト」または「アスベスト含有吹付けロックウール」について、除去などの対策工事を行う場合に、 費用の2/3(上限300万円)を補助します。(消費税は補助対象外です。) |
| 定員 | 有り |
| 業者指定 | 無し |
| 問い合わせ先 | 建築局企画部建築防災課 |
横浜市の解体費用相場はいくら?
解体工事の費用は、建物の構造や坪数、周辺環境によって大きく異なります。
横浜市のように住宅密集地と郊外が混在する都市では、重機が入りにくい立地や交通規制の影響で、追加費用が発生するケースもあります。
建物の構造別にみた費用目安
横浜市で解体を検討する場合、神奈川県の平均的な解体費用を目安に考えるのが一般的です。
以下は、構造と坪数に応じた費用の相場です。
| 坪数 | 坪単価の目安 |
|---|---|
| 10坪未満 | 約6.8万円/坪 |
| 10坪台 | 約7.1万円/坪 |
| 20坪台 | 約6.5万円/坪 |
| 30坪台 | 約6.1万円/坪 |
| 40坪台 | 約5.7万円/坪 |
| 50坪台 | 約5.6万円/坪 |
| 60坪台 | 約5.0万円/坪 |
| 70坪以上 | 約5.3万円/坪 |
たとえば、30坪の木造住宅の場合、
30坪 × 6.1万円 = 約183万円 が解体費用の目安となります。
ただし、残置物の処分や特殊な構造、狭小地での作業といった追加要素により、実際の費用は前後する可能性があります。
費用が高くなる・安くなるケース
解体費用は、建物の構造や広さだけでなく、敷地の立地や周辺環境によっても変動します。
横浜市のように坂道や狭い道路が多い地域では、追加コストが発生しやすいケースもあります。
以下に費用が増減する主な要因をまとめました。
| 状況 | 高くなる要因 | 安くなる要因 |
|---|---|---|
| 立地 | 重機が入れない・道幅が狭い | 作業しやすい平坦な敷地 |
| 建物の状態 | 残置物が多い、老朽化が激しい | 室内が空で解体が容易 |
| 特殊対応 | アスベスト含有・地中障害物の撤去 | 特別な処理が不要な場合 |
| 工事範囲 | 整地・外構撤去まで含む | 建物のみの最小限工事 |
現地調査を行わなければ正確な見積もりは出せないため、複数業者に見積もりを依頼し、それぞれの内訳や対応内容を比較検討することが重要です。
解体工事価格は上昇傾向
木造住宅の解体費用は、ここ数年で全国的に上昇しています。
下記グラフでは、各年度の平均的な傾向をもとに算出した概算値を示しており、実際の費用は、建物の構造・立地・工事条件などによって大きく変動するため、あくまで目安として参考にしてください。
また、自治体の補助金を活用することで、実際の自己負担額が軽減できるケースもあります。
正確な費用を知りたい場合は、早めの見積り依頼を行うのがおすすめです。
概算シミュレーター
該当市区町村を選択すると、補助金を含めたおおよその解体工事費用が分かります。
このシミュレーターは、あくまで目安を知るためのツールです。
実際の費用は建物の構造や立地条件などによって変わるため、正確な金額を知りたい方は見積もりを依頼するのがおすすめです。
解体費用を抑えるポイント
横浜市のように解体ニーズが多い都市では、業者の数も多く、価格差が生まれやすいのが現状です。
費用を抑えるためには、事前の準備や業者選定の工夫が大きな差を生みます。
相見積もりの重要性
解体費用を抑えるうえで、最も効果的なのが「相見積もり」です。複数の業者に同じ条件で見積もりを依頼することで、適正な価格を把握し、不当な請求を避けることができます。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 適正価格の把握 | 各社の見積もりを比較し、相場を理解できる |
| 価格交渉が可能に | 他社の金額を基に交渉がしやすくなる |
| サービス内容の比較 | 工期・処分範囲・対応力なども併せて評価できる |
| 業者の誠実さが見える | 対応や説明の丁寧さから信頼度を測れる |
横浜市内には地域密着型の業者から大手解体業者まで多数あるため、2〜3社に相談し、条件や説明内容を比較することが失敗しないコツです。
業者選びの注意点
解体工事は、費用の安さだけでなく「安全性」と「信頼性」が重要です。不適切な業者に依頼すると、近隣トラブルや法令違反のリスクもあります。
以下の項目を確認しながら業者を選びましょう。
| チェックポイント | 内容 |
|---|---|
| 許可の有無 | 建設業許可、解体工事業登録、産業廃棄物収集運搬許可などが必要 |
| 保険加入状況 | 工事中の事故やトラブルに備えた損害保険・労災保険に加入しているか |
| 契約書・見積書の明確さ | 作業範囲・費用内訳・追加費用の有無が明記されているか |
| 近隣配慮の姿勢 | 挨拶回りや防音対策など、住環境への配慮があるか |
| 説明力 | 工事の流れや疑問点への説明が丁寧かどうか |
横浜市のように人口が多く住宅密集地が多い地域では、近隣トラブルの回避が非常に重要です。
信頼できる業者を選ぶことで、安心して解体工事を進められます。
まとめ:空き家対策と補助金で解体を前向きに
横浜市は住宅総数が約194万戸と非常に多く、空き家数も約168,600戸、うち放置空き家が51,500戸と深刻な状況です。自治体では空き家活用のマッチングや改修・除却補助、相談体制の整備など、対策を進めていますが、全ての空き家に補助金が出るわけではありません。
しかし、制度の条件を確認して上手に活用することで、費用の負担を軽減し、安全で安心な住環境の維持につなげることが可能です。解体に関しても、相見積もりや信頼できる業者選定により、費用とトラブルを最小限に抑えることができます。
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