横須賀市では、空き家の増加が深刻な社会問題となりつつあります。
特に、かつて活発だった住宅地や坂の多い地域では、居住者の高齢化や相続放棄により、住まわれなくなった住宅が増加しています。
倒壊や景観悪化、近隣トラブルなどを未然に防ぐためには、空き家の適切な管理や処分が不可欠です。
この記事では、横須賀市における空き家の現状や、解体費用の相場、活用できる補助制度などを、解体を検討している空き家所有者の目線で解説していきます。
横須賀市は今「空き家」が増えている?
神奈川県南部に位置する横須賀市では、空き家の増加が顕著になっています。
人口減少や高齢化、住み替えの進行などにより、かつて住宅地として栄えていた地域でも空き家が目立つようになっています。
市街地から離れた谷戸地域などでは、空き家の放置による倒壊や防災上のリスクも指摘されており、行政・地域の両面で対策が求められています。
最新の空き家率データ
横須賀市は、神奈川県内でも特に空き家の多い自治体の一つです。
下表の通り、空き家率は15.55%と高く、うち約12,800戸が放置空き家と推計されています。
これは、住宅総数の約6.58%にあたる水準です。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 空き家率 | 15.55% |
| 空き家数(戸) | 30,270戸 |
| 放置空き家率 | 6.58% |
| 放置空き家数(戸) | 12,800戸 |
| 住宅総数(戸) | 194,640戸 |
放置空き家の割合が高いということは、管理されずに老朽化が進んでいる住宅が多いということでもあります。防災・景観・防犯面でのリスクを含んでおり、今後の対策が急務です。
なぜ空き家が増えているのか
横須賀市で空き家が増えている背景には、全国共通の要因に加えて、地域特有の事情も影響しています。
以下のような要因が複合的に作用し、空き家の増加を招いています。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 人口減少と高齢化 | 横須賀市では若年層の流出が続き、65歳以上の高齢者の割合が年々増加。空き家となる住宅の多くは、相続後も使われないまま放置されるケースが多い。 |
| 谷戸地形や坂道が多い | 市街地から外れた「谷戸地域」では、急斜面や狭い道路が多く、移動や買い物が不便で、住み続けるには不向きとされることも多い。 |
| 賃貸やセカンドハウスの不活用 | 市内には旧軍港地区などで開発された集合住宅群が多く、使用されない賃貸や別荘物件が空き家化する傾向にある。 |
| 相続放棄・処分の困難さ | 固定資産税の負担や売却の難しさから、相続人が物件を放置する事例が多発している。とくに古い住宅地では再建築不可の土地も多く、手放すことも難しい。 |
特に、地形的な制約と老朽住宅の混在により、空き家の利活用が難しいという横須賀市特有の事情が、問題の長期化につながっています。
横須賀市の空き家対策・補助金制度
横須賀市では、空き家問題の深刻化を受けて、所有者への支援や流通促進、防災対策を目的とした複数の制度・取り組みを実施しています。以下に主なものをまとめます。
神奈川県 横須賀市 の補助金情報
空き家解体費用助成事業
| 事業・条令名 | 空き家解体費用助成事業 |
|---|---|
| 制度の概要 | 横須賀市では、古くなり老朽化した空き家の解体工事費用に対する補助を行っています。 空き家の老朽度や築年数などの状況に応じ、利用できる補助金は以下の2種類のうち、いずれかになります(1軒の空き家に対して2種類の補助金は併用できません)。 いずれも工事着手前に申請が必要となります。 利用希望者は解体工事の見積書(本店住所地が横須賀市内の事業者が発行したもの)と空き家の現況写真(外観)を用意して、まちなみ景観課にご相談ください。申請書類や添付書類をご案内します。 |
| 対象建築物の概要 | 横須賀市内にある空き家で、次の項目全てに該当するもの。 ・市職員による老朽度判定の結果、所定の点数を上回る住宅であること。 ・横須賀市内の解体工事事業者(本店住所地が横須賀市内の事業者)による解体工事であること。 ・解体工事着手前に、建物の所有者または管理者が申請を行うこと。 |
| 補助金額概要 | 解体工事費用の2分の1(ただし上限金額35万円) |
| 定員 | 有り |
| 業者指定 | 無し |
| 問い合わせ先 | 都市部まちなみ景観課 担当:空き家管理支援担当 |
旧耐震空き家解体助成事業
| 事業・条令名 | 旧耐震空き家解体助成事業 |
|---|---|
| 制度の概要 | 横須賀市では、古くなり老朽化した空き家の解体工事費用に対する補助を行っています。 空き家の老朽度や築年数などの状況に応じ、利用できる補助金は以下の2種類のうち、いずれかになります(1軒の空き家に対して2種類の補助金は併用できません)。 いずれも工事着手前に申請が必要となります。 利用希望者は解体工事の見積書(本店住所地が横須賀市内の事業者が発行したもの)と空き家の現況写真(外観)を用意して、まちなみ景観課にご相談ください。申請書類や添付書類をご案内します。 |
| 対象建築物の概要 | 横須賀市内にある空き家で、次の項目全てに該当するもの。 ・旧耐震基準(昭和56年5月以前)により建築され、その後耐震改修がされていない住宅であること。 ・過去3年以上使用していない空き家であること。 ・横須賀市内の解体工事事業者(本店住所地が横須賀市内の事業者)による解体工事であること。 ・解体工事着手前に、建物の所有者または管理者が申請を行うこと。 |
| 補助金額概要 | 解体工事費用の2分の1(ただし上限金額15万円) |
| 定員 | 有り |
| 業者指定 | 無し |
| 問い合わせ先 | 都市部まちなみ景観課 担当:空き家管理支援担当 |
狭あい道路拡幅整備助成事業
| 事業・条令名 | 狭あい道路拡幅整備助成事業 |
|---|---|
| 制度の概要 | 狭あい道路拡幅整備助成事業は、狭い道路を幅員4メートルに広げるために、後退する敷地を寄付していただくことにより、道路拡幅をすることに対する助成事業です。 本助成金制度では、後退用地内にある門・塀などの支障物件の撤去や移設にかかる費用の一部を助成します。 また、市が基本的に測量・登記・道路整備を行いますが、協議により申請者が測量・登記・道路整備を行う場合、その費用の一部を助成します。 助成金制度の利用をご希望の方は事前相談書を提出し、協議を行ってください。 ただし、すでにセットバックされている土地は対象となりません。 そのほか、道路位置指定、土地区画整理事業、開発行為(自己の居住用は除きます)及び許可を要する宅地造成工事は対象となりません。 狭い道路は、日常生活の通行をはじめ、消防・救急活動、災害時の避難、日照・風通など住居環境の支障となっています。また、近年では福祉介護などにも車が使用されており、狭い道路では不便をしいられています。これらの問題の解消を目指し、「狭あい道路拡幅整備助成事業」を進めています。 安全で安心して暮らせるまちづくりを進めるため、市民の皆さんのご理解とご協力をお願いします。 |
| 対象建築物の概要 | 【適用基準】 ・道路が建築基準法第42条第2項の規定に基づく市道であること ・申請地に接する道路の境界がすべて確定されていること ・後退用地を市に寄付すること ・後退用地を道路整備すること又は後退用地の道路整備を市が行うことを承諾すること ・測量登記必要図書作成を自ら行うこと又は市が行う測量登記業務を承諾すること ・申請地が市街化区域内であること ・市税又は法人税を滞納していないこと 【適用除外】 ・狭あい道路より低い位置にある土地 ・階段状道路のため四輪自動車で行けない土地 ・宅地造成等規制法に基づく宅地造成工事 ・土地区画整理法に基づく土地区画整理事業及び都市計画法に基づく開発行為 ・建築基準法第42条第1項第5号に規定する道路の位置の指定を伴う事業 ・国、地方公共団体又は公団等が行う事業 |
| 補助金額概要 | 1.支障物件の除去又は移設 門柱:1本につき13,000円 門扉:1組につき9,300円 塀:見付面積1平方メートルにつき4,400円 立木(高さ1.2メートル以上):1本につき21,000円 生垣:延長1メートルにつき3,500円 設備(除去又は移設):給排水管・ガス管・電柱、その他これらに類するもの、施工1件につき30万円を限度とする ※支障物件の除去又は移設の助成は、50万円を限度とする。 2.擁壁の撤去・築造 撤去:見付面積1平方メートルにつき32,000円 築造:見付面積1平方メートルにつき94,000円 ※支える土の高さが50cm以上のものを対象とする。 ※擁壁の撤去・築造の助成は、200万円を限度とする。 |
| 定員 | 無し |
| 業者指定 | 無し |
| 問い合わせ先 | 建設部道路整備課 担当:計画管理担当 |
横須賀市の解体費用相場はいくら?
空き家を適切に管理・処分するうえで避けて通れないのが「解体工事」です。
特に横須賀市では、傾斜地や狭い道路が多い地域も存在し、条件によって解体費用が大きく変動する可能性があります。
建物の構造別にみた費用目安
解体費用は、建物の規模によって変動します。
横須賀市においても、以下の神奈川県内の坪数別費用相場を参考に、費用の目安を把握することができます。
| 坪数 | 坪単価 |
|---|---|
| 10坪未満 | 6.8万円/坪 |
| 10坪台 | 7.1万円/坪 |
| 20坪台 | 6.5万円/坪 |
| 30坪台 | 6.1万円/坪 |
| 40坪台 | 5.7万円/坪 |
| 50坪台 | 5.6万円/坪 |
| 60坪台 | 5.0万円/坪 |
| 70坪以上 | 5.3万円/坪 |
費用は、建物の大きさだけでなく、立地条件や周辺環境によっても増減することがあります。相場を参考にしつつ、実際の現場に応じた見積もりを取ることが重要です。
費用が高くなる・安くなるケース
同じ坪数の建物でも、現場の状況によって解体費用は大きく変動します。
特に横須賀市は坂道や狭小地が多く、重機の搬入や作業効率に影響するため、費用増加の要因が多い地域です。以下に、費用が高くなるケース・安くなるケースを整理しました。
| 費用が高くなる要因 | 内容 |
|---|---|
| 接道が狭い・坂道 | 重機や車両の搬入に制限がかかり、人力作業が増える |
| 残置物が多い | 家財やゴミの撤去費が追加される |
| 地中障害物の発見 | 基礎や浄化槽、井戸などの撤去で追加工事が発生 |
| 隣地との距離が近い | 養生や手壊し作業が必要になり、手間と時間がかかる |
| 建材にアスベスト含有 | 専門処理が必要で費用が大幅に上がる |
| 費用が安くなる要因 | 内容 |
|---|---|
| 敷地が広く平坦 | 重機が入りやすく、作業効率が良い |
| 建物が新しい・小さい | 解体しやすく、廃材の分別も容易 |
| 残置物がない | 撤去・処分費がかからない |
| 更地への整地が不要 | 土地活用目的でない場合、整地費を省略できる |
これらの要因を踏まえ、見積もり時には現地調査が必須です。
見積もりが安価でも、追加費用が発生するケースが多いため、事前に条件を明確にしておくことが重要です。
解体工事価格は上昇傾向
木造住宅の解体費用は、ここ数年で全国的に上昇しています。
下記グラフでは、各年度の平均的な傾向をもとに算出した概算値を示しており、実際の費用は、建物の構造・立地・工事条件などによって大きく変動するため、あくまで目安として参考にしてください。
また、自治体の補助金を活用することで、実際の自己負担額が軽減できるケースもあります。
正確な費用を知りたい場合は、早めの見積り依頼を行うのがおすすめです。
概算シミュレーター
該当市区町村を選択すると、補助金を含めたおおよその解体工事費用が分かります。
このシミュレーターは、あくまで目安を知るためのツールです。
実際の費用は建物の構造や立地条件などによって変わるため、正確な金額を知りたい方は見積もりを依頼するのがおすすめです。
解体費用を抑えるポイント
解体工事には大きな費用がかかるため、少しでもコストを抑えたいと考えるのは自然なことです。
特に横須賀市のように、地形や立地の条件によって追加費用が発生しやすい地域では、事前の準備や業者選びが結果に大きく影響します。
相見積もりの重要性
解体工事を依頼する際、複数の業者から見積もりを取る「相見積もり」は必須のステップです。
業者によって費用構成や対応範囲が異なるため、1社だけの見積もりでは妥当性を判断できません。相場感をつかみ、過剰な請求や不要な追加費用を防ぐうえでも、相見積もりは非常に有効です。
| 相見積もりを取るメリット | 内容 |
|---|---|
| 適正価格が分かる | 同じ条件でも価格に差が出るため、適正な相場を把握できる |
| 提案内容の比較ができる | 作業内容・対応範囲・追加費用の条件などを精査できる |
| 業者の姿勢が見える | 説明の丁寧さや対応スピードから信頼性を判断できる |
| 交渉材料になる | 複数社の見積もりを基に値下げ交渉も可能になる場合がある |
特に横須賀市のような立地条件が複雑な地域では、現地調査の精度や説明力も重要な比較ポイントになります。
業者選びの注意点
解体工事は高額なうえ、騒音・粉じん・廃棄物処理など近隣に与える影響も大きいため、信頼できる業者を選ぶことが非常に重要です。
見積もりの金額だけでなく、許可の有無や対応力、トラブル防止の姿勢など、総合的な判断が求められます。
| チェックポイント | 解説 |
|---|---|
| 建設業・解体工事業の許可 | 都道府県知事または国土交通大臣の許可が必要。許可番号の有無を確認 |
| 産業廃棄物収集運搬業の許可 | 廃材の運搬にも許可が必要。適切な処分ルートを持っているか |
| 契約前の説明が丁寧か | 工程・範囲・追加費用・近隣対応などの説明が明確であるか |
| 近隣対応の実績 | 工事前のあいさつやトラブル対応の実績があるか |
| 保険加入の有無 | 万一の事故や損害に備えた保険(賠償責任保険など)に加入しているか |
安さだけで選ぶと、無許可業者による不法投棄や近隣トラブルのリスクもあるため、実績と信頼性を重視した選定が不可欠です。
まとめ:空き家対策と補助金で解体を前向きに
横須賀市では、空き家の増加と放置によるリスクが深刻化しています。
しかし、自治体が実施している補助制度や空き家バンクを活用することで、所有者が負担を軽減しつつ空き家問題に対処する道が整備されつつあります。
解体費用は建物の規模や立地によって変動しますが、費用を抑える工夫や信頼できる業者選びにより、トラブルを避けながらスムーズに進めることができます。
特に補助金の活用や、相見積もりによる適正価格の把握は非常に有効です。
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