名古屋市では、老朽化した空き家が増加し、防災や景観の面で課題となっています。
こうした空き家を放置せず、安全で住みよいまちづくりを進めるために、市では解体工事に対する補助制度も整備されています。
この記事では、名古屋市における空き家の現状と、実際にかかる解体費用の目安、補助金の内容、さらに補助制度を活用した場合の実質的な費用負担まで、わかりやすく解説します。
名古屋市は今「空き家」が増えている?
名古屋市では、住宅の老朽化や相続放棄などを背景に、空き家の数が年々増加しています。
空き家は防災や景観、治安面でも地域にさまざまな悪影響を及ぼすため、市としても積極的な対策を進めています。
ここでは、名古屋市の空き家率やその要因、地域社会への影響について詳しく見ていきましょう。
名古屋市の空き家率と戸数の現状
名古屋市の最新データによると、市内の住宅総数に対する空き家の割合は13%を超えており、空き家問題が身近な課題になりつつあります。
項目 | 数値 | 補足 |
---|---|---|
住宅総数 | 約1,310,600戸 | 名古屋市内全域 |
空き家戸数 | 約173,000戸 | 居住者不在の住宅数 |
空き家率 | 約13.2% | およそ7〜8軒に1軒が空き家 |
区ごとの空き家率幅 | 約7.9%~15.8% | 地域により大きな差あり |
参考情報:令和5年 住宅・土地統計調査結果(名古屋の住宅・土地)住宅及び世帯に関する基本集計
なぜ名古屋市で空き家が増えるのか?主な要因
名古屋市において空き家が増加している背景には、以下のような複合的な要因があります。
要因 | 内容 |
---|---|
高齢化・世代交代 | 所有者が高齢化し、居住移行や死亡後に管理されなくなるケースが増加。 |
相続・承継の問題 | 遺産相続時に建物をどう扱うか決められず、放置される不動産が残る。 |
需要の変化 | 地域ごとに居住ニーズが変化し、住宅需要が低下したエリアにおいて空き家化が進行。 |
管理コストの負担 | 建物維持・修繕には費用がかかるため、放置されたままの方が経済的負荷が少ないと判断されることがある。 |
土地利用計画の停滞 | 再開発や土地利用の計画が後回しになるエリアでは、古い建物が残りやすい。 |
こうした背景が複雑に絡み合い、名古屋市でも空き家の放置・老朽化が進む傾向があります。
空き家が放置されるリスクと地域への影響
空き家を放置することは、単なる資産の非活用という問題だけでは済みません。
以下のようなリスク・影響が地域住民や自治体に及びます。
- 防災・倒壊リスク:老朽化した建物が強風や地震時に倒壊する危険性
- 景観・衛生問題:外観の劣化、雑草の繁茂、害虫の発生など
- 防犯性の低下:無人住宅が不法侵入や不正利用の対象になる可能性
- 地域価値の低下:空き家が増えると、街の印象が下がり、不動産価値にも悪影響
- 行政コスト負担:所有者不明物件の対応や指導、解体の補助負担など
住民の通報や相談も増えており、名古屋市としてもこれを重要課題のひとつと認識しており、空き家対策を強化する必要があります
名古屋市の解体補助金
名古屋市では、増加する空き家への対応として、除却(解体)や利活用を支援する各種施策を展開しています。
特に老朽化した空き家の撤去に対しては、条件を満たせば補助金を受け取れる制度があり、自己負担を抑えて解体できるチャンスです。
ここでは、名古屋市が提供している代表的な空き家対策事業をご紹介します。
愛知県 名古屋市 の補助金情報
戸建木造住宅除却助成
事業・条令名 | 戸建木造住宅除却助成 |
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制度の概要 | 地震による木造住宅の倒壊から生命を守るため、戸建木造住宅を除却する費用の一部を助成します |
対象申請者 | ・補助対象住宅を所有する個人(法人所有の戸建木造住宅は補助対象外です。) ・以前の所有者が亡くなられた直後など、現在の所有者を書類で確認できない場合は、あらかじめご相談ください。 |
対象建築物の概要 | 補助対象住宅は以下のすべての条件に該当する木造住宅です ・昭和56年5月31日以前に着工した木造住宅 ・名古屋市木造住宅無料耐震診断を受け、判定値が1.0未満と判断された戸建木造住宅 ・耐震改修工事補助金、耐震シェルター等設置補助金の交付を受けていないもの |
補助金額概要 | 次のいずれかのうち、一番低い金額 ・上限額20万円 ・対象住宅を除却する費用の3分の1 ・対象住宅の延床面積に1平方メートル当たり9,600円を乗じた額の3分の1 |
定員 | 有り |
業者指定 | 無し |
問い合わせ先 | 住宅都市局市街地整備部耐震化支援課木造住宅耐震担当 |
老朽木造住宅除却助成
事業・条令名 | 老朽木造住宅除却助成 |
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ブロック塀等撤去費助成
事業・条令名 | ブロック塀等撤去費助成 |
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制度の概要 | 地震発生時におけるブロック塀等の倒壊による被害や避難時の通行の妨げとなることを防止するために、撤去費用の一部を助成します。 |
対象建築物の概要 | ・道路に面する高さ1m以上のブロック塀等の撤去(隣地に面する部分等は補助対象外とし、道路に面する部分のみ補助対象となります。) ・ブロック塀等とは、コンクリートブロック、レンガ、大谷石等の組積造の塀、その他これらに類する塀で、門柱等も含みます。 |
補助金額概要 | 補助率:対象撤去費用の2分の1以内 メートル単価:6,000円/m 限度額:10万円 ・いずれか低い金額を補助金額とします。 ・補助金額は千円未満切り捨てとします。 ・撤去するブロック塀の長さは10センチメートル未満切捨てとします。 |
定員 | 無し |
業者指定 | 無し |
問い合わせ先 | 住宅都市局市街地整備部耐震化支援課木造住宅耐震担当 |
木密地域ブロック塀等撤去助成
事業・条令名 | 木密地域ブロック塀等撤去助成 |
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制度の概要 | 本市における主な木造住宅密集地域においてブロック塀等を撤去する場合、その費用の一部を助成します。本市は、この助成を行うことにより、地域の防災性の向上を図っていきます。 |
対象建築物の概要 | 道路に面する高さ1m以上のブロック塀等の撤去(隣地に面する部分等は助成対象外) (注)ブロック塀等とは、コンクリートブロック、レンガ、大谷石等の組積造の塀、その他これらに類する塀で、門柱等も含みます。 (注)地表面より上部にあるブロック塀等をすべて撤去する必要があります。 |
補助金額概要 | 以下のうち、どちらか低い額を助成します(上限額15万円)。 ・対象撤去費用の4分の3 ・対象撤去延長に1メートル当たり9,000円を乗じた額 |
定員 | 無し |
業者指定 | 無し |
問い合わせ先 | 住宅都市局市街地整備部市街地整備課総括担当 |
名古屋市民間既存建築物吹付けアスベスト対策補助事業
事業・条令名 | 名古屋市民間既存建築物吹付けアスベスト対策補助事業 |
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制度の概要 | 全国的にアスベストによる健康被害が顕在化しており、市民の安全・安心を確保するとともに、新たなアスベスト被害を未然に防止するため、本市のアスベスト問題への対応策の1つとして、民間建築物の所有者等に対し次の支援を行います。 |
対象建築物の概要 | 名古屋市内にある民間の所有する建築物で、これからも継続して使用する建築物が対象となります。また、吹付けアスベストの分析調査・除去等に関する他の補助を受けていないもので、これから分析調査・除去等を行う建築物が対象となります。 以下の場合には補助の対象とはなりませんので、ご注意ください。 ・解体を予定している建築物 ・吹付けアスベストの分析調査・除去等について、既に分析機関・工事施工者との契約済みの建築物、分析調査・除去等を実行中の建築物、分析調査・除去等が完了した建築物 ・吹付け建材ではなく、成形板等について分析調査・除去等を行う建築物 ・違反建築物 ・固定資産税及び都市計画税が滞納となっている建築物 |
補助金額概要 | ・アスベストを含有している可能性がある吹付け建材の分析調査を促進するため、分析調査に要した費用の全額、ただし15万円を限度として補助します。 ・アスベスト含有吹付け建材(吹付アスベストおよびアスベスト含有吹付けロックウールで、アスベスト含有率0.1重量パーセント超のものに限る。)の除去、封じ込め又は囲い込みなどの改修を促進するため、除去等に要した費用の3分の2以内、ただし120万円を限度として補助します。 |
定員 | 無し |
業者指定 | 無し |
問い合わせ先 | 住宅都市局建築指導部建築安全推進課建築防災担当 |
名古屋市耐震診断義務付け対象建築物耐震改修補助事業(除却事業)
事業・条令名 | 名古屋市耐震診断義務付け対象建築物耐震改修補助事業(除却事業) |
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制度の概要 | 建築物の耐震改修の促進に関する法律により耐震診断が義務付けされる要安全確認計画記載建築物のうち、耐震診断の結果、「安全な構造でない」と判定された建築物について、耐震改修設計費、建替え設計費、改修工事費及び除却工事費の一部等を助成します。 |
対象建築物の概要 | ・要安全確認計画記載建築物で耐震診断の結果、「安全な構造でない」と判定されたもの ・「耐震改修促進法」に基づく耐震改修の計画の認定等を受けて、耐震改修設計・工事を実施するもの ・沿道建築物について、除却工事を実施するもの ※国、地方公共団体その他公の機関が所有する部分に係る経費相当額は補助対象外となります。 ※補助対象建築物に該当するかの確認は、下記作成担当の耐震化支援課までお問合せください。 |
補助金額概要 | いずれかのうち一番低い額以内 ・耐震改修工事費用の15分の11 ・6,050万円 ・床面積による上限(3万円/平方メートル)の15分の11 |
定員 | 有り |
業者指定 | 無し |
問い合わせ先 | 住宅都市局市街地整備部耐震化支援課建築物耐震担当 |
名古屋市の解体費用相場はいくら?
名古屋市で解体工事を検討する際、最も気になるのが「実際にどれくらい費用がかかるのか?」という点でしょう。
解体費用は建物の構造や規模、立地条件などによって大きく異なります。
ここでは、愛知県内における平均的な解体費用の目安を構造別にご紹介します。
また、費用を左右する具体的な条件についても詳しく解説します。
建物の構造別にみた費用目安
建物の構造は、解体費用に大きく影響する重要な要素です。
一般的には、木造<鉄骨造<鉄筋コンクリート造(RC造)の順で費用が高くなる傾向にあります。
これは、構造が頑丈になるほど、使用する重機や工法が複雑になるためです。
以下は、愛知県における構造別の平均的な解体費用の目安です。
構造 | 坪単価の目安 | 30坪の場合の概算費用 |
---|---|---|
木造 | 3〜4万円/坪 | 約90〜120万円 |
鉄骨造 | 4〜6万円/坪 | 約120〜180万円 |
RC造 | 6〜8万円/坪 | 約180〜240万円 |
また、木造住宅の場合、建物の延床面積(坪数)が増えるほど坪単価が下がる傾向があります。以下は木造住宅における坪数別の単価目安です。
坪数 | 坪単価目安 |
---|---|
10坪未満 | 約6.0万円 |
10坪台 | 約6.2万円 |
20坪台 | 約5.5万円 |
30坪台 | 約4.9万円 |
40坪台 | 約4.8万円 |
50坪台 | 約4.6万円 |
60坪台 | 約4.4万円 |
70坪以上 | 約3.9万円 |
費用が高くなる・安くなるケース
解体費用は、構造や面積以外にも、さまざまな条件によって変動します。
以下に、費用が高くなりやすい/安くなりやすい典型的なケースをまとめました。
費用が高くなるケース
- 重機が入れない狭小地・密集地:手作業が増えるため人件費がかさむ
- 隣地との距離が近い住宅密集地:養生費や安全対策費が増加
- 廃棄物の分別が多い場合:分別解体の手間と処分費が増える
- アスベストや土壌汚染の除去が必要:特別な処理費が加算される
費用が安くなるケース
- 広い前面道路に面した敷地:重機や運搬車両がスムーズに進入可能
- 更地化前提で基礎や外構が簡素:撤去作業が少ない
- 木造で築年数が古い建物:構造が弱く、解体しやすい
これらの条件をふまえたうえで見積もりを依頼することで、実際の費用感がより具体的に見えてきます。
解体工事価格は上昇傾向
木造住宅の解体費用は、ここ数年で全国的に上昇しています。
下記グラフでは、各年度の平均的な傾向をもとに算出した概算値を示しており、実際の費用は、建物の構造・立地・工事条件などによって大きく変動するため、あくまで目安として参考にしてください。
解体工事をご検討の方は、早めに見積もりを取ることをおすすめいたします。
概算シミュレーター
該当市区町村を選択すると、補助金を含めたおおよその解体工事費用が分かります。
このシミュレーターは、あくまで目安を知るためのツールです。
実際の費用は建物の構造や立地条件などによって変わるため、正確な金額を知りたい方は見積もりを依頼するのがおすすめです。
解体費用を抑えるポイント
解体工事はまとまった費用がかかるため、できるだけ出費を抑えたいと考える方も多いでしょう。
とはいえ、安さだけで業者を選ぶと、工事品質やトラブルのリスクが高くなる可能性もあります。
ここでは、費用を抑えつつ、納得できる解体工事を実現するための具体的なポイントを紹介します。
相見積もりの重要性
解体工事を依頼する際は、複数の業者から見積もりを取る「相見積もり」が必須です。業者によって費用の出し方や項目の記載方法が異なるため、1社だけでは費用の妥当性が判断できません。
相見積もりを取ることで、
- 価格の相場感がわかる
- 不要な工事や高額請求を見抜ける
- 交渉材料にできる
といったメリットがあります。最低でも2〜3社から比較するのが理想です。
業者選びの注意点
費用だけで業者を選ぶのは避けましょう。以下のようなポイントに注意して、信頼できる業者かどうかを見極めることが大切です。
チェック項目 | 内容 |
---|---|
実績の有無 | 名古屋市や近隣地域での解体経験があるか |
許可・登録 | 建設業許可、解体工事業登録、産業廃棄物収集運搬許可などを取得しているか |
見積書の明確さ | 工事項目・数量・単価などが具体的に記載されているか |
対応の丁寧さ | 質問や相談に対して丁寧な説明があるか |
契約前の説明 | 工事の流れ・注意点・補償内容をきちんと説明してくれるか |
補助金申請に強い業者を選ぶ理由
名古屋市では空き家の除却に対する補助金制度がありますが、申請には細かい書類や工事の進行管理が必要です。補助金をうまく活用するには、制度に詳しい業者に依頼するのが安心です。
補助金申請に慣れた業者であれば、
- 対象要件を満たすような工事計画の提案
- 申請書類や添付資料の作成サポート
- スケジュールに合わせた工期調整
など、手間やミスを最小限に抑えてくれるため、補助金を確実に受け取る可能性が高まります。
まとめ:補助金を活用して、実質費用を抑えた解体を
名古屋市では、空き家の増加に対応するため、解体工事に対する補助金制度を設けています。
老朽化した空き家をそのまま放置すると、倒壊や防犯リスクが高まるだけでなく、地域の環境や資産価値にも悪影響を及ぼしかねません。
補助金を上手に活用すれば、解体費用の自己負担を大きく減らすことができます。さらに、相見積もりを取り、信頼できる業者を選ぶことで、コストを抑えつつ安心して工事を任せることができます。
まずは、現在お住まいの空き家が補助金の対象になるかどうかを確認し、必要であれば専門業者へ相談してみましょう。
解体工事をご検討の方へ
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