解体する建物にアスベストが使用されていた場合、費用が高くなる可能性があることをご存知でしょうか。
解体する建物にアスベストが含まれていると通常の解体工事と比べて費用が高くなりやすいですが、場合によっては解体費用の補助を受けられる可能性があります。通常の解体工事よりも費用が高くなるため、補助金が受けられるのであれば是非とも利用したいものです。
本記事では、アスベストを含む建物の解体費用や補助金を受ける手続きについて詳しくご紹介していきます。是非最後まで読んで解体工事を検討する参考にしてみてください。
アスベスト除去費用相場
解体する建物にアスベストが使用されていた場合、解体工事を行う前にアスベストを除去しなくてはなりません。
アスベストの除去費用の相場としては、国土交通省より目安となる金額が公表されており、社団法人建設業協会がそのデータをまとめたものが以下の通りとなっています。
処理面積 | |
300㎡未満 | 2万~8.5万円/㎡ |
300㎡~1,000㎡ | 1.5万~4.5万円/㎡ |
1,000㎡以上 | 1万~3万円/㎡ |
※価格は事前調査や仮設工事、廃棄物処理など除去工事費用全てを含む
処理面積100㎡の場合で考えてみましょう。
処理面積が300㎡未満の場合、1㎡あたり費用目安は2万~8.5万円であるため、処理費用としては200万円~850万円程度かかる計算です。
上記表はあくまでも費用の目安であるため、状況によって費用は異なる点には注意しておきましょう。
面積や部位毎に費用が異なる
アスベスト除去費用は、面積や部位毎に費用が異なります。
通常の建物であれば、解体費用は延床面積で計算するケースが多いでしょう。一方、アスベストを処理する場合、延床面積ではなく処理面積で決まります。
また、作業しにくい場所に使用されていたケースだと、除去費用も高額になりやすいです。このように面積や部位によって費用が異なるため、実際には事前調査を行ったうえでどのくらいの範囲で除去工事が必要になるかを判断する必要があるでしょう。
アスベストレベルにより費用が異なる
アスベストの除去費用は、アスベストレベルによって費用が異なる点に注意しておきましょう。
アスベストは飛散の程度に応じてレベル1~3に分けられています。レベル1の場合は最も飛散する可能性が高く、その分費用も高額となるケースが多いです。一方、レベル3の場合は飛散する可能性が低く、除去費用も安く抑えられる可能性が高いでしょう。
アスベストを吸引してしまえば、さまざまな症状が出てしまうため、気付かないうちに吸引しないよう防止策を取る必要があります。
アスベストレベルに応じて工事に必要な準備や工法も変わってくるため、危険性が高いほど費用が高額になってしまうのです。
調査により費用が異なる
アスベスト処理費用は調査結果によって異なります。
実際に処理費用がいくらかかるかは調査をしてみないと分からないものです。アスベストの有無や含有度などは事前調査を行わなければ見積もりできません。天井の高さや部屋の形状、作業のしやすさなどによって費用は大きく変わってきます。
実際に見積もりしてみたら想定よりも増減するケースも多い点は注意しておきましょう。
アスベスト解体に補助金は出るの?
アスベスト除去費用の相場についてご紹介しました。
では、実際にアスベストを含む建物を解体する場合には補助金が利用できるのでしょうか。
ここでは、アスベスト関連の補助金についてご紹介しますのでそれぞれ見ていきましょう。
そもそもアスベストとは?
そもそもアスベストとは、耐火性や断熱性、防音性に優れていたため、建築材料として古くから使用されてきたものです。
しかし、その後の調査によって、アスベストは非常に細かい繊維であり、呼吸と同時に吸い込んでしまうと肺がんや悪性中皮腫などの要因になる可能性が高いことが判明しました。そのため、1975年からアスベスト使用にあたって規制されるようになり、2006年からはアスベストの使用が全面禁止となったのです。
住宅の場合、壁面内に使われているだけなら特に問題はないものの、解体工事を行う際には除去工事を行わなければ飛散してしまう危険があります。そのため、建物にアスベストが使用されていた場合には、解体工事費以外にアスベスト除去の費用が必要となってしまうのです。
補助金が出るかどうかは自治体によって異なる
国土交通省では、民間建築物に対するアスベストに対して補助金制度を設けていますが、補助金が出るかどうかは自治体によって異なります。
支給額や支給対象が自治体によって異なるため、補助金の対象になるかどうかは近隣の自治体に確認・相談する必要があるので注意しておきましょう。
また、補助金が受けられる場合であっても、補助金の申請手続きを行う前に調査や除去作業を行ってしまうと補助金が受けられない可能性があります。せっかく補助金制度が利用できるのに受け取れないとなるともったいないです。事前に確認したうえで行うようにしましょう。
アスベスト調査とアスベスト除去
補助金が適用されるケースは自治体によって異なりますが、国土交通省ではアスベストの調査もしくは除去に対して補助金制度を創設しています。
そのため、アスベストは調査費用と除去費用で別々に補助金制度が利用できる可能性がある点を押さえておきましょう。
また、補助金制度があるかどうかは自治体によって異なるため、事前の確認は必須といえます。せっかくの補助金制度ですので、有効活用できるようにしておきましょう。
アスベスト調査の補助金
アスベストの調査費用に対する補助金制度はどのような条件になっているのでしょうか。
ここでは、国が定めているアスベスト調査の補助金の支給条件について以下の通りご紹介しますので詳しく見ていきましょう。
対象建築物
アスベスト調査の補助金対象となる建物は以下のアスベストが使用されている可能性のある住宅や建築物が対象となっています。
- 吹付けアスベスト
- アスベスト含有吹付けロックウール
- 吹付けバーミキュライト
- 吹付けパーライト
補助内容
アスベスト調査の補助内容としては、吹付け建材にアスベスト使用の有無を調べるために要した費用が対象となっています。
1975年以降は徐々に使用の規制が始まり、2006年に全面禁止となったため、1975年以前に建築された建物にはアスベストが使用されている可能性が高いです。
解体を検討している建物が1975年以前に建築されていた場合には、補助対象となるケースが考えられます。事前に近隣の自治体へ確認しておくようにしましょう。
補助金額
調査費用の補助金額は、原則として1棟につき25万円が限度とされています。
金額は自治体によって異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。
なお、補助金制度が利用できる場合には、事前に自治体に対して補助金の交付申請を行い、交付が決定してから調査業者と契約する流れになります。事前に契約してしまうと補助金が利用できない可能性があるため、注意が必要です。
アスベスト調査に補助金が出る自治体の事例
アスベスト調査に対して補助金が受けられる自治体の事例をいくつかご紹介します。
自治体名 | 補助対象・要件 | 補助率・補助金額 |
東京都足立区 | ・平成18年9月30日までに建築された建築物または工作物 ・調査着手前の申請・対象建築物・工作物につき1回を限度 | 対象調査費の100%(限度額10万円) |
東京都練馬区 | ・吹付け材の成分分析調査 ・空気環境測定調査 | 戸建住宅:調査費用の1/2(限度額5万円) 分譲共同住宅、賃貸共同住宅、事業所等:調査費用の1/2(限度額10万円) |
埼玉県さいたま市 | 本市の区域内に存する建築物(国、地方公共団体その他公共団体もしくはこれらに準じる者が所有する建築物を除く) | 限度額25万円/棟 |
上記以外にも各自治体によってアスベスト調査の補助金制度が設けられているケースがあります。補助内容は各自治体によって異なるため注意しておきましょう。
アスベスト除去の補助金
アスベスト調査の補助金制度をご紹介しました。
では、除去費用の補助金制度はどのように定められているのでしょうか。
ここでは、国が定めているアスベスト除去の補助金制度について詳しくご紹介します。
対象建築物
アスベスト除去の補助は以下のアスベストが使用されている建物が対象です。
- 吹付けアスベスト
- アスベスト含有吹付けロックウール
上記のアスベストが使用されている民間建築物に対して補助金が支給されます。
対象とする費用
対象となる費用内容としては、対象建築物の所有者等が行う吹付けアスベスト等の除去や封じ込め、もしくは囲い込みに必要な費用と定められています。
建築物の解体・除去を行う場合は、アスベスト除去に要する費用相当額が対象です。
補助金額
補助金額としては、アスベストの除去や封じ込め、囲い込みに必要な費用に対して補助金が支給されます。
補助金の上限額は自治体によって異なりますが、国の補助率は各自治体の補助額の1/2以内(かつ全体の1/3以内)と定められています。
各自治体によって補助金額は異なるため一概にはいえませんが、さいたま市ではアスベスト除去に要した費用の2/3以内で最大600万円もの補助金が利用可能です。
例えばアスベスト除去に300万円かかった場合でも、200万円は補助金が利用できるため、自己負担額は100万円で済みます。
一方、東京都港区の場合、除去費用の1/2相当額(上限額:戸建住宅50万円、共同住宅・事業所等200万円)となっており、さいたま市よりも補助金額が少ないです。
このように各自治体によって補助金額の上限が異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
アスベスト除去に補助金が出る自治体の事例
アスベスト除去に対して補助金が受けられる自治体の事例をいくつかご紹介します。
自治体名 | 補助対象・要件 | 補助率・補助金額 |
東京都足立区 | 平成18年9月30日までに建築された建物または工作物 ・工事前の申請 ・対象建築物・工作物につき1回を限度 ・除去等工事完了日から5年間継続的に使用される建築物 | 対象除去等工事費の50% 一戸建て住宅:上限額50万円 一戸建て以外:上限額200万円 |
東京都練馬区 | ・露出した吹付けアスベスト等の除去工事 ・既に囲い込み・封じ込められた除去工事であって、建築物等の増改修(修繕、模様替えおよび増築)に伴い実施するもの | 戸建住宅:工事費用の2/3 (限度額200万円) 分譲共同住宅、賃貸共同住宅、事業所等:工事費用の1/2 (限度額400万円) |
埼玉県さいたま市 | 本市の区域内に存する建築物(国、地方公共団体その他公共団体もしくはこれらに準じる者が所有する建築物を除く) | 補助対象経費2/3以内の額(600万円を限度) |
この他にも各自治体によってアスベスト除去の補助金制度が設けられているケースがあります。内容は上記のように各自治体によって異なるため、詳しくは各自治体に問い合わせるとよいでしょう。
補助金を受けるための手続き
アスベストの補助金には、調査と除去のそれぞれに補助金制度が設けられており、各自治体によって制度内容に違いがあることをご紹介しました。
では、実際に補助金を受けるにはどういった手続きの流れを取るのでしょうか。
補助金を受けるまでには、さまざまな手続きが必要であり、流れを把握しておくとスムーズに進められます。また、補助金を利用するには除去工事を行う前に申請する必要があり、補助金が受け取れるのは工事完了後です。こうした点も押さえておく必要があるでしょう。
ここでは、補助金申請の流れについてご紹介します。
事前相談
補助金交付の申請を行うには、補助対象となるかどうかの確認も含め、各自治体への事前相談が必要です。事前相談時には、解体する建物の配置図や建物図面、現況の写真などの資料を準備したうえで補助金申請が可能かを相談するとよいでしょう。
建物の登記簿謄本などがあると、建築年月が分かるため、アスベストが使用されている可能性が高いかどうかも判断しやすくなります。
また、事前相談を行う前に、あらかじめ準備しておくものを確認しておくとスムーズに話ができるのでおすすめです。
解体業者を探す
申請を行うにはアスベスト解体の業者を選定する必要があります。
解体業者の選定を行う場合には、複数業者に相見積もりを行うとよいでしょう。適正価格かつ信頼できる業者であるかの見極めが重要です。
また、解体時期によっても金額が異なるケースが多いでしょう。閑散期に依頼すると価格を抑えられる場合が多いため、補助金の申請期間や自身の予定ともすり合わせて業者へ依頼することをおすすめします。
補助金申請
解体業者が選定できたら、補助金の交付申請書を自治体に提出しましょう。
その後、自治体による審査を経て補助金の交付決定通知が行われます。解体業者との契約は補助金が受け取れると決まってからでも問題ありません。
また、交付申請手続きには申請期間が定められているケースが多く、申請期間に遅れてしまえば補助金が受け取れなくなるため注意しておきましょう。
アスベスト調査と除去工事の実施
補助金の交付が決定し、業者との契約を交わしたら、いよいよアスベスト調査と除去工事が行われます。解体予定建物のアスベスト使用の有無や含有率を調査し、除去工事が終われば、完了報告を自治体に提出して工事完了です。
補助金の給付
完了報告が受理されると自治体による現地確認などの完了検査が実施されます。
完了検査後に補助金額の確定通知が届くため、自治体へ請求書を提出してようやく補助金受領となります。
まとめ
アスベストの除去費用相場や補助金制度の内容から申請手続きの流れを詳しくご紹介してきました。
解体する建物にアスベストが使用されていた場合、費用が高くなるケースが多く見受けられます。1975年以前に建てられた建物の場合、アスベストが使用されている可能性が高く、解体を検討するのであればアスベスト調査は必須といえるでしょう。
アスベスト補助金は調査と除去のそれじれに補助が受けられます。事前に確認して積極的に補助金制度を活用するのがおすすめです。
是非本記事を参考に補助金制度を利用してみてはいかがでしょうか。
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